Rペース (レペティションペース / Repetition Pace)|ぼっちランナーズ【BRC】

Rペース (レペティションペース / Repetition Pace)

上原 一真

「解体新書」#18

「Repetition / レペティション」とは、日本語に訳すると「繰り返し」や「反復」といった意味 になります。
『R』とは、「Repetition / レペティション」を表しています。


つまり、

レペティション(Rペース)トレーニング: 速めのランニング(疾走)と長めの休憩(リカバリー)を繰り返すトレーニング

という事になります。今のところは『Rペース』は「レペティショントレーニングで走るペース」 と理解しておけばOKです。


※厳密には、実際に「レペティショントレーニング」と呼ばれる練習でも、『Rペース』で走らな い場合がありますが、これについては記事後半[注1]にて記述します。


『Rペース (レペティション ペース / Repetition Pace)』とは、「2~3分間継続できるペース」

まずは、『Rペース』の運動強度を感覚的な基準で表してみましょう。


【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/7ページ

■Rペースの強度(感覚的な基準)■

2~3分間程度継続できるペース


『Rペース』は『Iペース』より強度が高く、ダニエルズ理論の“5種類のトレーニングペース”の中で 最も強度が高いペースとされています。

『Iペース』の強度は「11~12分間継続できるペース」でしたが、『Rペース』の強度は「2~3分 間継続できるペース」が目安になります。2~3分間というとかなり短いですよね。距離にすると 「400m~1000m」くらいでしょうか。短時間しか持続しないということは、それだけ運動強度 が高い(ペースが速い)ということを意味します。


ちなみに、生理学的な数値で『Rペース』の運動強度を表すと以下のようになります。


上記の数値を見ていただくと、『Rペース』の運動強度はVO2max100%を超えていますね。
 VO2maxは有酸素運動における「最大スピード」のようなものです。つまり、そのVO2maxを超

えているということは『Rペース』は“無酸素運動”の要素が入ってくるという事になります。


“無酸素運動”の典型は「100m~400mなどの短距離種目」ですよね。言い換えれば、『Rペー ス』というのは“短距離的”な要素が絡んでくるとも言えます。それだけ負荷が高いペースなので す。


なお、もう一つ『Rペース』の努力感を例えるならば、*VO2max(最大酸素摂取量)は1000m×5本 インターバルの時のペースにほぼ等しいので、『Rペース』はその約1.1~1.2割の努力感ですね。

では、『Rペース』で走ることによってどういったトレーニング効果が得られるのでしょうか?


(4)

(1) 無酸素性(作業)能力の向上
(2) 最大スピード(VO2maxと無酸素的能力)の向上

先ほど『Rペース』には“無酸素運動”の要素、“短距離”的な要素が関わってくると書いたように、 『Rペース』で走ることによって期待できるのは“最大スピード(VO2maxと無酸素的能力)”の向

■Rペースの強度(生理学的な基準値)■

●VO2max(最大酸素摂取量)の105~120%

●HRmax(最大心拍数)の100%


■Rペーストレーニングの主な目的■

(1) 無酸素性(作業)能力の向上

(2) 最大スピード(VO2maxと無酸素的能力)の向上

(3) ランニングエコノミー(経済性)の向上

正しいフォームで速く走る能力を身に付ける


【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/7ページ

上です。これは『Iペース』よりさらに高いレベルのスピードを指しています。なぜなら“無酸素的 能力”も含まれているからです。(『Iペース』で鍛えられる“最大スピード”は有酸素的能力 (VO2max)です。)

(3) ランニングエコノミー(経済性)の向上
(4) 正しいフォームで速く走る能力を身に付ける


また、速い動作で走りつつも、正しいランニングフォームで走ることで、ランニングエコノミー (経済性)の向上が期待できます。


正しいランニングフォームとは滑らかでエネルギーロスの少ない走り方のことで、こうした走り 方を身につけることで「ラクに、速く走る」ことが出来るようになります。だから、「ダニエルズ 理論」で言うところの『Rペース』は正しいランニングフォームを維持できる範囲で行う必要があ ります。

その結果、「ダニエルズ理論」では『Rペース』で走る時間は1回につき2分を超えないようにする べきとされています。これは、『Rペース』で走る時間が2分を超えると、トレーニング強度が高 すぎて正しいランニングフォームを維持できなくなるからです。ジタバタともがいて走るのはNG ということですね。


代表的な走力レベルの『Rペース』をお見せしますね。


■走力レベル(VDOT)別のRペース表■

● サブ2.5 (2:28:40) = VDOT : 67 → 1:08 /400m ● サブ3.0 (2:58:47) = VDOT : 54 → 1:22 /400m ● サブ3.5 (3:28:26) = VDOT : 45 → 1:34 /400m ● サブ4.0 (3:59:35) = VDOT : 38 → 1:48 /400m

● サブ5.0 (4:58:00) = VDOT : 29 → – ● サブ6.0 (5:56:30) = VDOT : 23 → –

※Rペースで2分以上走るのはトレーニング強度が高すぎるため、400m換算のペースで記載して います。 ※サブ5.0~サブ6.0レベルの方は、Rペースで走る練習はほとんど必要ない(トレーニング強度が高 過ぎる)ため未記入です。

「レペティション 」と「インターバル」の違い

マラソン初心者 : あれ?でも、「レペティション(Rペース)トレーニング」は、一定の距離を繰 り返して走る練習ってことだったよね?「インターバル(Iペース)トレーニン グ」も同じような練習だったけど、この2つは何が違うの?

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

4/7ページ

ウエハラ : 良い質問ですね。確かに、「インターバル(Iペース)トレーニング」も「レペ ティション(Rペース)トレーニング」も「一定の距離を繰り返し走る」という 意味では非常に似ています。 しかし、この2つには以下のような違いがあります。


ポイントは「休憩(リカバリー)時間」です。


●インターバルトレーニング:

速いランニング(疾走)と短めの休憩(リカバリー)を繰り返す。

●レペティショントレーニング:

速いランニング(疾走)と長めの休憩(リカバリー)を繰り返す。


●インターバルトレーニング

短めの休憩(リカバリー)で体力が完全回復しない状態で次の本(Rep)に移る。

→設定された本数を全て安定的にこなす(全体を見る)。

→「レペティション」より有酸素的な能力向上の効果が高い。

また、“レースでの再現性”が比較的高い。

●レペティショントレーニング

長めの休憩(リカバリー)で体力を十分に回復させて次の本(Rep)に移る。

→一本一本の疾走区間を出力を上げて走る(負荷を高める)。

) また、“レースでの再現性”が比較的低い。

マラソン初心者 : 休憩(リカバリー)を長めにとるか短めにとるかでトレーニングの効果が結構変 わるんだね~」


『Rペース (レペティション ペース / Repetition Pace)』の活用方法、具体的な練習例

「レペティション(Rペース)トレーニング」の具体例としては、以下のようなものがあります。


→「インターバル」より(無酸素的

最大スピード向上の効果が高い。
■具体的な練習メニュー例■

(1) 400m × 5~10 レペティション

(2) 3km + 2km + 1km レペティション [※注1]

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

5/7ページ

(1) 400m × 5~10 レペティション
 1つ目は、

400m × 5~10 レペティション

P(ペース) :Rペース
R(リカバリー):2~3分 (体力が十分に回復するまで)


「ダニエルズ理論」通り、Rペースで走る時間は2分以内に収めます。 そして、速いスピードの中であっても良いフォームを維持することを意識して走ります。


(2) 3km + 2km + 1km レペティション [※注1]

2つ目は、

3km + 2km + 1km レペティション[※注1]

P(ペース) :Tペース + Iペース + Rペース
R(リカバリー):6~8分 (3kmと2km間) ‒ 3~5分(2kmと1km間) (体力が十分に回復するまで)


※注1 : 「レペティション」という言葉の捉え方について 「ダニエルズ理論」上で言うところの「R(レペティション )ペース」は、「I(インターバル)ペー ス」よりも速いペースとして位置付けています。しかし、日本の陸上・マラソンの現場では「レペ ティション」という言葉が若干異なる意味合いで使われていることが多々あります。ある練習会に よっては例えば、「3km + 2km + 1km」というメニューも「レペティション」と呼ぶ場合があ ります。

「ダニエルズ理論」通りに解釈すれば、この練習メニューでは「Rペース」という無酸素運動に近 いほどの高速ペースで「3km + 2km + 1km」を走らなければいけないことになりますが、これ では負荷が高過ぎます。その為、ここで言う「レペティション」とは、「体力を最大限回復させ てから次の本(Rep)に移る」ということのみを意味していると考えるのが妥当です。


ここでは、疾走区間のペースが「Rペース」である必要はなく、その時々の距離に合わせた高い努 力感で走るという事になります。実際に「レペティション」と呼ばれる練習でも、必ずしも「Rペ ース」で走るわけではないということを覚えておいてください。


例えば「3km + 2km + 1km」というメニューの場合、ダニエルズ理論の「Rペース」で走るの は無理があるため、「Iペース」や「Tペース」の強度でトレーニングを行うのが現実的でしょう。
 この場合、「レペティション」という言葉の意味は


レペティショントレーニング

:疾走と疾走の間の休息(リカバリー)は長めにとり、体力を最大限回復させる。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/7ページ という点のみにフォーカスしており、、必ずしも疾走区間が「Rペース」である必要はありませ

ん。ただし、「レペティショントレーニング」に期待する効果としては


(1) 無酸素性(作業)能力の向上
(2) 最大スピード(VO2maxと無酸素的能力)の向上 (3) ランニングエコノミー(経済性)の向上
(4) 正しいフォームで速く走る能力を身に付ける

でしたよね。だから、「Rペース」とまではいかなくても、それなりの高い運動強度(Tペース、Iペ ースなど)で疾走区間を走ることは、「レペティショントレーニング」の効果を得るためには重要 です。


どちらかというと、日本の陸上・マラソンの現場では「レペティション」というと上記のような 意味で使われることが多く、僕も当サイトでは、これと同じ意味合いで「レペティション」とい う言葉を使っていきます。教科書の定義と実践の場での定義が、やや異なる場合があるので、「R ペース」はこの辺がややこしいんですよね。


ひとまず当講義では基本的には「レペティショントレーニング」を以下のように定義します。

る。

同じ言葉でも人によっては解釈や使い方が違うことは多いです。他のランナーの認識と自分の認 識との間にギャップがあるかもしれないので、そういったところはランニングクラブの中で練習 する時やランニング書籍を読む時にも注意しておきましょう。

まとめ :『Rペース(レペティション/Repetiton)』

1『Rペース』とは、2~3分間程度継続できるペース

レペティショントレーニング

速めのランニング(疾走)と長めの休憩(リカバリー)を繰り返すトレーニング

※疾走区間は努力感(絶対的なペースではない)を高め、休憩(リカバリー)は体力を十分回復させ

2『Rペース』トレーニング(レペティショントレーニング)の目的は、

(1) 無酸素性(作業)能力の向上。

(2) 最大スピード(VO2maxと無酸素的能力)の向上。

(3) ランニングエコノミー(経済性)の向上。

(4) 正しいフォームで速く走る能力を身に付ける。

3『Rペース』トレーニングの具体的な練習メニュー例は・・・

(1) 400m × 5~10 レペティション

(2) 3km + 2km + 1km レペティション

4「レペティショントレーニング」と言っても、疾走区間を『Rペース』で走らない場合もあるの

で言葉の定義には注意しよう。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 7/7ページ

「レペティショントレーニング」は、人によって定義が異なることが多い。

まとめ :『5種類のトレーニングペース』

1「トレーニングの目的と種類」によって、練習で走るべきペースは変わってくる。
2 自分の「走力レベル」によって、練習で走るべきペースは変わってくる。
3 自分の「VDOT」を計算し、練習で走るべき“5種類のトレーニングペース”を把握しよう。

ABOUT ME
上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
株式会社SmilesMiles 代表取締役 1992年生まれ、鹿児島県出身。 2005年、中学時代より走り始めランニング歴は17年以上。 1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。 2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間40分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。 現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。 「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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