Eペース (イージーペース / Easy Pace)

「解体新書」#14
『Eペース (イージー ペース / Easy Pace)』とは、
「ラクに走れるペース」「会話ができるくらいのペース」
『E』とは、「Easy / イージー」を表しています。 まずは、『Eペース』の運動強度を感覚的な基準で表してみましょう。
『Eペース』は“5種類のトレーニングペース”の中では一番運動強度の低いトレーニングペースであ り、ダニエルズ氏によれば長距離トレーニングの大部分はこの『Eペース』で行うのが良いとされ ています。ちなみに、生理学的な数値で『Eペース』の運動強度を表すと以下のようになります。
●
上記の数値は特に覚える必要はないですが、参考程度に頭の片隅に置いておくと良いかと。
例えて言えば、*VO2max(最大酸素摂取量)は1000m×5本インターバルの時のペースにほぼ等し いので、『Eペース』はその約6~7.5割の努力感ですね。
■Eペースの強度(感覚的な基準)■
●ラクに感じるペース
●会話ができるくらいのペース
■Eペースの強度(生理学的な基準値)■
VO2max(最大酸素摂取量)の59~74%
●HRmax(最大心拍数)の65~78%
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/4ページ では、『Eペース』で走ることによってどういったトレーニング効果が得られるのでしょうか?
要するにマラソンの基礎能力をアップさせるトレーニング効果があるということです。
『Eペース』で走るトレーニングは、基礎能力を向上させる目的なので、これは全体のマラソン練 習の大部分を占めるトレーニングということになります。何事も基礎が大事ですからね。グラグ ラで脆い基盤に頑丈な建物は作れません。
結局マラソン練習の肝は、基本的なトレーニングをコツコツと積み上げていくところにありま す。「効率的な練習」というのも大事ですが、やはりある程度の「泥臭い練習の積み上げ」は必 要です。
マラソン初心者 : ほほぉ。『Eペース』について何となく分かってきたぞ。じゃあ、僕の走力レベ ルだと、『Eペース』ってどのくらいになるんだろう・・・?
自分の『Eペース』がどれくらいなのか気になりますよね。『Eペース』を始めとした“5種類のト レーニングペース(E、M、T、I、R)”は、個人の走力レベルによって変わってきますので、それぞ れで自分の『Eペース』を計算する必要があります。
代表的な走力レベルの『Eペース』をお見せしますね。
■Eペーストレーニングの主な目的■
1身体の基礎作り
2心筋の発達
3毛細血管の発達
4怪我に対する耐性を高める
■走力レベル(VDOT)別のEペース表■
● サブ2.5 (2:28:40) = VDOT : 67 → 4:24 ~ 3:53 /km ● サブ3.0 (2:58:47) = VDOT : 54 → 5:14 ~ 4:38 /km ● サブ3.5 (3:28:26) = VDOT : 45 → 6:03 ~ 5:23 /km ● サブ4.0 (3:59:35) = VDOT : 38 → 6:54 ~ 6:11 /km ● サブ5.0 (4:58:00) = VDOT : 29 → 7:53 ~ 7:12 /km ● サブ6.0 (5:56:30) = VDOT : 23 → 8:41 ~ 7:57 /km
マラソン初心者 :
おお!僕の目標はサブ3だから『Eペース』は 5:14 ~ 4:38 /kmかぁ。 これくらいのペースで『Eペース』トレーニングをこなせるようになれば、 サブ3達成はかなり現実的になってくるということだね!
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」
3/4ページ
ウエハラ : その通り!でも、いきなりサブ3レベルの練習をするのは負荷が高過ぎるの で、まずは現状に合ったレベルから練習していきましょう。 現状の自己ベストはどれくらいですか?
マラソン初心者 : そうかそうか。段階を踏んでいかないといけないということだね。 僕の今の自己ベストは「3時間15分」だから・・・ これは「VDOT = 48.7」に値するようだ。 そして、求められた『Eペース』は・・・ 5:46 ~ 5:14 /km!
ウエハラ :
お!「VDOT計算ツール」をバッチリ使いこなせていますね! ここで計算したペースはあくまで目安に過ぎませんが、普段の練習をどれく らいのペースで走ればいいか悩んでいる人にとっては大変役立ちますので、 定期的に確認してみると良いですよ。
『Eペース (イージー ペース / Easy Pace)』の活用方法、具体的な練習例 『Eペース』は「ダニエルズ理論」通りに解釈すれば、普段のジョグのペースということになりま す。しかし、一口に「普段のジョグ」と言っても様々なものがありますよね。
例えば「30分ジョグ」と「120分ジョグ」。両者の練習において、どちらも同じペースで走るべ きかと言えばそうではないことの場合が多いでしょう。
・「30分ジョグ」は時間が短い分、走るペースはやや速くなる。 ・「120分ジョグ」は時間が長い分、走るペースはやや遅くなる。
というわけで、『Eペース』で走るジョグ(Jog)はどれくらいの時間が適正かという話になるわけ ですが、ここでは「30~80分間」くらいが目安にすると良いかと思います。
という感じです。ここで前提として抑えていただきたいのは、このジョグの走行時間はかなり“人 による”というところです。
■具体的な練習メニュー例■
●40~80分 ビルドアップジョグ(Jog)
※「Eペースより遅いペース」~徐々に「Eペース」まで上げていく
●30分~60分 ジョグ(Jog)
※最初から最後まで「Eペース」内で走り続ける。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 4/4ページ
先述した通り、僕個人としては普段から長時間走る時にこの『Eペース』で走り続けるのはなかな かシンドイです。その為、僕は『Eペース』を「早めのジョグペース」と捉えて、「遅めのジョグ ペース」とは切り分けて考えています。そして、ここで言う「長時間」の目安は「90分以上」。 個人的には、90分以上『Eペース』で走り続けるのは普段の練習としては負荷が高過ぎると感じて います。とはいえ、このあたりは個人差がかなりあると思うので参考までに。
まとめ : 『Eペース(イージー/Easy)』
1『Eペース』とは「ラクに走れるペース」「会話ができるくらいのペース」。
※ただし、「ダニエルズ理論」上のEペースがラクに感じられないケースも多々ある為、その場合
は個人で調整しましょう。
2『Eペース』トレーニングは、マラソンの大部分を占めるトレーニングであり、心肺機能向上や
頑丈な身体作りといった基礎的なマラソンスキルを高める効果がある。
3『Eペース』トレーニングの具体的な練習メニュー例は・・・
●40~80分 ビルドアップジョグ(Jog)
●30分~60分 ジョグ(Jog)
※注1 「ダニエルズ理論」では「E(イージー)ペース」は「ラクに感じるペース」と定義していますが、 実際にランナーの間では「ダニエルズのEペースは速過ぎる!」「Eペースなのに、全然イージー (ラク)じゃない!」という声をよく聞きます。
ゆっくり長く走ることを好むと言われているマラソンランナーにとっては特にそう感じられるの かもしれません。しかし、「ダニエルズ理論」はあくまで一つの考え方に過ぎません。各自で「E ペース」よりも遅いペースを設定して走るのも全然ありだと思います。
個人的にもダニエルズの「Eペース」は普段のジョグで走るペースとしてはやや速過ぎるように感 じます。その為、僕は「Eペース」は「速めのジョグペース」と捉えて、普段のジョグやリカバリ ー(疲労抜き)の為のジョグとは切り分けて考えています。