Tペース (閾値ペース / Threshold Pace)

「解体新書」#16
『Tペース (閾値 ペース / Threshold Pace)』 とは? 『T』とは、「Threshold / 閾値(いきち)」を表しています。
「閾値(いきち)」とは「乳酸性作業閾値」のことで「LT値」と呼ばれたりもします。
『Tペース (閾値 ペース / Threshold Pace)』とは、 「20~30分間継続できるペース(練習時)」
まずは、『Tペース』の運動強度を感覚的な基準で表してみましょう。 ●
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『Tペース』と「LT値(乳酸性作業閾値)」はほぼ同じものと考えてもらって大丈夫です。 要するに、「血中の乳酸濃度が急激に上昇するポイント」=「乳酸が溜まり始めるポイント」で す。これは私逹の乳酸分解能力の上限を意味します。
■Tペースの強度(感覚的な基準)■
20~30分間継続できるくらいのペース(練習時)
60分間継続できるくらいのペース(レース時)
●終わるのが待ち遠しいペース
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/5ページ
「乳酸が溜まる」と、どうなるか? →呼吸が苦しくなってきて、身体が思い通りに動かなくなる。 例:5kmを走る時に3kmを過ぎたくらいから、身体の動きが鈍りみるみるペースダウン。
皆さんも上記のように「ラクな状態」から「呼吸が苦しくなってきて、身体が思い通りに動かな くなる状態」へと転じる境界線みたいなものを感じたことはありませんか?この場合、LT値を超 えた(乳酸の分解が追いつかない)ランニングペースで走っていると考えられます。人によっては、 それは4:00/kmペースかもしれませんし、4:30/kmペースかもしれません。
『Tペース』をタイムで表すと個人差がありますが、なるべく大多数に共通する表現をするなら ば、20~30分間継続できるくらいのペース。レース時なら60分間継続できるくらいのペースと言 えます。
ちなみに、生理学的な数値で『Tペース』の運動強度を表すと以下のようになります。 ■■
上記の数値は特に覚える必要はないですが、参考程度に頭の片隅に置いておくと良いかと。 例えて言えば、*VO2max(最大酸素摂取量)は1000m×5本インターバルの時のペースにほぼ等し
いので、『Tペース』はその約8.5~9割の努力感ですね。 では、『Tペース』で走ることによってどういったトレーニング効果が得られるのでしょうか?
これまで何度も出てきているワードですが、「LT値(乳酸性作業閾値)」。これを引き上げること が『Tペース』トレーニング(閾値トレーニング)の目的です。
「LT値(乳酸性作業閾値)」とは、乳酸が溜まり始めてキツくなり始めるペースですから、このラ インを引き上げることによって、「ラクに走れる最速ペース」が引き上げられるということです。 この「ラクに走れる最速ペース」というのは僕なりの表現ですが、割とイメージしやすいかなと思 います。
とにかく、マラソンの真髄は「いかにラクに、速く、長く走れるか」というところなのでこの 「LT値(乳酸性作業閾値)」の引き上げはめちゃくちゃ重要です。
Tペースの強度(生理学的な基準値)
●VO2max(最大酸素摂取量)の86~88%
●HRmax(最大心拍数)の88~90%
■Tペーストレーニングの主な目的■
1LT値(乳酸性作業閾値)の向上(乳酸処理能力を高める)。
2持久力(速めのペースに持ちこたえる力)を高める。
3ラクに走れる最速ペースを引き上げる。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 代表的な走力レベルの『Tペース』をお見せしますね。
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■走力レベル(VDOT)別のTペース表■
● サブ2.5 (2:28:40) = VDOT : 67 → 3:21 /km ● サブ3.0 (2:58:47) = VDOT : 54 → 4:00 /km ● サブ3.5 (3:28:26) = VDOT : 45 → 4:38 /km ● サブ4.0 (3:59:35) = VDOT : 38 → 5:19 /km ● サブ5.0 (4:58:00) = VDOT : 29 → 6:17 /km
● サブ6.0 (5:56:30) = VDOT : 23 → 7:13 /km
『Tペース (閾値 ペース / Threshold Pace)』の活用方法、具体的な練習例 『Tペース』トレーニング(閾値トレーニング)には、以下のようなものがあります。
(1) 20分間走 (テンポ走)
1つ目は「20分間走 (テンポ走)」 ※距離にすると、4000m~6000m走 | Tペース
■具体的な練習メニュー例■
(1) 20分間走 (テンポ走)
(2) 2km × 3~5本 クルーズインターバル【オススメ】
(3) 3km × 2~3本 クルーズインターバル【上級者向け】
20分間走を『Tペース』で実施します。つまり、『Tペース』とは“20~30分間継続できるくらい のペース”なのだから、「実際に20分間走っちゃえばいいじゃん!」という凄くシンプルな考え方 ですね。
ただし、普段の練習で20分間ぶっ続けで走るのは強度が高すぎるかもしれません。なので、20分 間走の中でペースを変化させるのもアリです。例えば、
■「20分間走」応用編■ ・前半10分間は、Tペースよりやや遅いペースで走る。 ・後半10分間は、Tペースで走る。
といったように、現実的に取り組みやすいように各自調整するといいでしょう。
(2) 2km × 3~5本 クルーズインターバル【オススメ】 「それでもやっぱり1発勝負で20分間走はシンドイかもな・・・」 という方にオススメなのが「クルーズインターバル」です。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 4/5ページ 「インターバル」というのはご存知の方も多いと思います。速いランニングと遅いランニングを
繰り返すトレーニングですね。「クルーズインターバル」もインターバルの一種です。
「20分間ぶっ続けでTペースで走れ」と言われればシンドイですが、インターバルという手法で短 い休息を挟むことで、『Tペース』で走る総距離を増やすことが容易になります。これが、僕が 「クルーズインターバル」をオススメする理由です。
例えば「2km (Tペース) × 5本」であれば、距離にして計10km、時間にして約40分間(4:00/km の場合)『Tペース』で走ることができますね。
↓↓↓
2km × 3~5本 クルーズインターバル
P(ペース):Tペース R(リカバリー):90~120秒 ジョグ ※Tペースで走る総距離 → 6~10km
「1kmのインターバル」に応用するなら以下のような感じ。 本数を多くして、『Tペース』で走る総距離を増やします。 ↓↓↓
1km × 8~10本 クルーズインターバル P(ペース):Tペース
R(リカバリー):60~90秒 ジョグ ※Tペースで走る総距離 → 8~10km
(3) 3km × 2~3本 クルーズインターバル【上級者向け】 (2)と同じ理屈で、「3kmのクルーズインターバル」も有効です。 ↓↓↓
3km × 2~3本 クルーズインターバル
P(ペース):Tペース
R(リカバリー):120~150秒 ジョグ ※Tペースで走る総距離 → 6~9km
しかし、「3kmのクルーズインターバル」はかなり集中力が要るので上級者向けです。あるいは、 ランニングクラブの練習会で実施したり、並走してくれるランナーと一緒に実施したりと、複数人 で行うのがオススメです。「3kmのクルーズインターバル」は、1人で実施すると妥協しがちか も。
「クルーズインターバル」とは・・・
『Tペース』のランニングを繰り返すトレーニング
まとめ :『Tペース(閾値/Threshold)』
1『Tペース』とは、
●20~30分間継続できるくらいのペース(練習時)
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 5/5ページ
●60分間継続できるくらいのペース(レース時)
2『Tペース』トレーニング(閾値トレーニング)を行うことで
「LT値(乳酸性作業閾値)」の向上が期待でき、「ラクに走れる最速ペース」が上がる。
3『Tペース』トレーニングの具体的な練習メニュー例は・・・
(1) テンポ走 (20分間走)
(2) 2km × 3~5本 クルーズインターバル【オススメ】
(3) 3km × 2~3本 クルーズインターバル【上級者向け】