Mペース (マラソンペース / Marathon Pace)

「解体新書」#15
『Mペース (マラソン ペース / Marathon Pace)』とは、
「フルマラソンのレースペース」 『M』とは、「Marathon / マラソン」を表しています。
まずは、『Mペース』の運動強度についてです。 これはもう簡単に予想できますよね。言葉通りです。
●
ちなみに、生理学的な数値で『Mペース』の運動強度を表すと以下のようになります。 ■■
上記の数値は特に覚える必要はないですが、参考程度に頭の片隅に置いておくと良いかと。 例えて言えば、*VO2max(最大酸素摂取量)は1000m×5本インターバルの時のペースにほぼ等し
いので、『Mペース』はその約7.5~8.5割の努力感ですね。 では、『Mペース』で走ることによってどういったトレーニング効果が得られるのでしょうか?
■Mペースの強度■
フルマラソンのレースペース
Mペースの強度(生理学的な基準値)
●VO2max(最大酸素摂取量)の75~84%
●HRmax(最大心拍数)の80~89%
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/4ページ
■Mペーストレーニングの主な目的■
1実際の(フルマラソンの)レースペースに慣れる。
2設定したレースペースで走ることで自信を付ける。
非常にシンプルですね。例えば、フルマラソンでサブ3が目標の方であれば、目標レースペースは 4:14/kmですよね。この目標レースペースである4:14/kmで走ることにより、レースを疑似体験 するのです。そして、
・レースペースで走って、身体はどういう反応をするのか。 ・レースペースで走って、余裕はあるか、ないか。 ・果たしてこのペースで42.195km持つのかどうか。
といったことを確認します。これらの確認作業を普段の練習から行っておくことで、現状の自分に 不足している点や改善点を見つけることができます。また、練習時に余裕を持って『Mペース』で 走れた場合は、レースで目標を達成するイメージが明確になり、自信が付きます。
なお「ダニエルズ理論」によれば、『Mペース』の目的は設定したペースに対する自信を付けるこ とであり、メンタル的な効果が主であると定義されています。
さらに、「『Mペース』の生理学的な効果は『Eペース』とまったく変わらない。」とも言われて います。この説には賛否両論ありますが、個人的には『Mペース』のランニングを行うことで精神 面だけでなく身体的(心肺機能および筋肉)にも変化は現れるように感じます。
以上を踏まえて、『Mペース』トレーニングにどれくらい重きを置くかは人それぞれですが、いず れにしろ自分の現状と目的に応じて練習計画を組み立てることが重要になってくるでしょう。
マラソン初心者 : ほほぉ。『Mペース』は要するに「フルマラソンのレースペース」ってことか ぁ。じゃあ、自分の『Mペース』を求めるのも簡単だね!
ウエハラ : そうですね!“5種類のトレーニングペース”の他のペース(E、T、I、Rペース) は計算するのがちょっとややこしいんですが、『Mペース』は単純に「フル マラソンのレースペース」なので分かりやすいですね。
代表的な走力レベルの『Mペース』をお見せしますね。
■走力レベル(VDOT)別のMペース表■
● サブ2.5 (2:28:40) = VDOT : 67 → 3:31 /km ● サブ3.0 (2:58:47) = VDOT : 54 → 4:14 /km
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/4ページ
● サブ3.5 (3:28:26) = VDOT : 45 → 4:57 /km ● サブ4.0 (3:59:35) = VDOT : 38 → 5:45 /km ● サブ5.0 (4:58:00) = VDOT : 29 → 7:02 /km
サブ6.0 (5:56:30) = VDOT : 23 → 8:23 /km
●
『Eペース (イージー ペース / Easy Pace)』の活用方法、具体的な練習例
では、実際に『Mペース』の練習としてはどのようなものがあるか見ていきましょう。早速、練習 メニュー例を出していきます。
(1) 12~16km Mペース走 こちらは単純にMペースで12~16km走り通すペース走ですね。
Mペース走の距離が「12~16km」である理由は・・・
一定のペースにおいて、
普段のポイント練習で走れる距離 × 3 = (ピーキングをして臨む)レース時に走れる距離 ※ピーキング = 調整)
と言われているからです。 つまり、フルマラソンに関して言えば
一定のペース(例えば4:14/km = サブ3ペース)において、 普段のポイント練習で走れる距離(約14km) × 3
= (ピーキングをして臨む)レース時に走れる距離 (42.195km) ということになります。もっと分かりやすく言い換えるならば、
一定のペース(例えば4:14/km = サブ3ペース)で14km走れた。
↓↓↓ ピーキングをしてフルマラソン(42.195km)を走ればサブ3できる(可能性が高い)。
特に明らかな情報のソースがあるわけではありませんが、一つの目安にはなりますね。
僕の経験上からも実際にこの式通りに結果を出せることが多くて、僕が自己ベスト(2時間34分 16秒 = 3:39/km)を出した時は、練習でも3:35/kmペースで14km程度走っていました。
■具体的な練習メニュー例■
(1) 12~16km Mペース走
(2) 12~24km ビルドアップ(E~M)ペース走
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 4/4ページ
また、僕が所属するランニングクラブにおいても「12~15km程度のMペース走」を行うのです が、他のランナーの方々も大体この式に当てはまっていましたね。この練習でサブ3を達成する方 を身近で数多く見てきましたので、僕の観測上はかなり信憑性の高い式だと思っています
(2) 12~24km ビルドアップ(E~M)ペース走 (1)の発展形として、(1)よりやや距離を長くしたペース走です。 距離を長くする(実際のフルマラソンの距離に近づける)ことで、フルマラソンのレース時における 再現性を高めるのが狙いです。
ただし、普段の練習において『Mペース』で24kmも走るのは若干負荷が高過ぎるかもしれないの で、24km走る場合は前半8kmくらい(総距離の3分の1)は『Eペース』で走るのがオススメです。
また、この練習はレース期、つまり寒い冬の時期(11月~2月)に行うことが多いと思いますが、寒 い日にいきなりレースペースで走ると怪我のリスクも高まります。そういった怪我のリスクを回避 する意味でも前半はペースを抑えて入り、後半徐々にペースを上げていくというやり方をオススメ します。
本番レースでの再現性を高めるには「余裕を持つこと」が必須。
今回は、2つの練習メニュー例を出しました。
(1) 12~16km Mペース走
(2) 12~24km ビルドアップ(E~M)ペース走
両者ともポイントは、やはり「本番のレースをイメージしながら走る」というところですね。 上記の練習を、「ガムシャラにもがいて、どうにかこうにか走り切ることができた」としても、そ れでは本番レースでの再現性はあまり高くないでしょう。 「このペースでフルマラソンを走り切るんだ」という意識を持って、余裕を保ちながら走ることが 『Mペース』トレーニングにおいては重要です。
まとめ : 『Mペース(マラソン/Marathon)』
1『Mペース』とは「フルマラソンのレースペース」。
2『Mペース』トレーニング行うことによってレースペースに対して身体がどういう反応をするの
か確認し、そこから課題を発見することができる。
また、レースペースに対する自信を付けることができる。
3『Mペース』トレーニングの具体的な練習メニュー例は・・・
(1) 12~16km Mペース走
(2) 12~24km ビルドアップ(E~M)ペース走