Iペース (インターバルペース / Interval Pace)|ぼっちランナーズ【BRC】

Iペース (インターバルペース / Interval Pace)

上原 一真

「解体新書」#17

『I』とは、「Interval / インターバル」を表しています。
「Interval / インターバル」は「間隔」とか「休憩時間」という意味ですが、陸上・マラソン界 においては、

という意味になります。つまり、『Iペース』は「インターバルトレーニングで走るペース」とい う風に、今のところは捉えてもらってOKです。

『Iペース (インターバル ペース / Interval Pace)』とは、「キツいと感じるペース」「3~5kmのレースペース」

まずは、『Iペース』の運動強度を感覚的な基準で表してみましょう。

● ● ●

インターバル(Iペース)トレーニング:

速めのランニング(疾走)

短めの休憩(リカバリー)を繰り返すトレーニング

■Iペースの強度(感覚的な基準)■

キツいと感じるペース

最大11~12分間継続できるペース

3~5kmのレースペース


【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/6ページ 『Iペース』の強度は『Tペース』よりもやや高まります。


『Tペース』の強度は「20~30分間継続できるペース」でしたが、『Iペース』の強度は「11~12 分間継続できるペース」が目安になります。また、「3~5kmのレースペース」も一つの目安にな りますが、いずれにしても「キツいと感じる」運動強度のはずです。

ちなみに、生理学的な数値で『Iペース』の運動強度を表すと以下のようになります。

上記の数値は特に覚える必要はないですが、参考程度に頭の片隅に置いておくと良いかと。 では、『Iペース』で走ることによってどういったトレーニング効果が得られるのでしょうか?


『Iペース』トレーニングの目的を一言で表しなさいと言われれば、「VO2max(最大酸素摂取量) の向上」というのが答えになるでしょう。

「VO2max(最大酸素摂取量)」は、要するにマラソンにおける「最大スピード」のことです。

厳密に言えば、次回記事で解説する「Rペース」やさらに強度の高い「ピュアスピード」などは存 在します。しかし、マラソン競技において使われるスピードとしてはこの『Iペース』つまり 「VO2max(最大酸素摂取量)」相当のペースが「最大スピード」と捉えてもらって問題ないと思 います。


マラソンなのに「最大スピード」を高める意味はあるの?

マラソン初心者 : でも、マラソンって42.195kmもあるのに「最大スピード」を高める意味って あるの?『Iペース』って12分しか継続しないんだよね?そんなに速く走る練 習ってマラソンランナーには必要ないんじゃない?

ウエハラ :
良い質問ですね。 確かに実際にフルマラソンのレースで『Iペース』つまり「最大スピード」で 走ることはほぼないですね。

■Iペースの強度(生理学的な基準値)■

●VO2max(最大酸素摂取量)の95~100%

●HRmax(最大心拍数)の97~100%

■Iペース(インターバル)トレーニングの主な目的■

1VO2max(最大酸素摂取量)の向上

2最大スピードの向上

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/6ページ

確かに、これから紹介する『Iペース』トレーニング(インターバルトレーニング)は一見、マラソ ンランナーにとってはペースが速すぎてマラソンランナーには必要ないように見えます。しかし、 マラソンランナーがトレーニングを行うことによって得られるめちゃくちゃ重要な効果がありま す。

それが・・・マラソンのレースペースに対する“余裕度”が上がるということ。

例えば、以下の2人がいたとします。


Aさん:全力で1000mを走って3分10秒 Bさん:全力で1000mを走って3分40秒


この2人がそれぞれ4分00秒/kmペースで走ったとしましょう。
 Aさん:最大スピード(3分10秒)より50秒遅い = “余裕度”が高い!

Bさん:最大スピード(3分40秒)より20秒しか変わらない = “余裕度”が低い… というような違いが現れます。レースペースに対して“余裕度”が高いと、それだけラクにペースを

持続して走れるし、後半ペースアップもできるかもしれません。

だからこそ、『Iペース』がいくら本番で使うことのないスピードとはいえ、そこをないがしろに するのは非常に勿体ないです。

ちなみに、僕が見てきたランナー達(特に陸上未経験者)は、この『Iペース』トレーニング(いわゆ るスピード練習)をしていないがために記録が伸びていないという方が非常に多かったです。


ところが、彼ら彼女らがスピード練習をすることで、マラソンの記録もグングンと伸びていった のです。市民ランナーだと「中々スピード練習なんてできない」という方も多いかもしれません が、練習会に参加してみたり、仲間を誘ってみたり、また1人でもやり方によってはスピード練習 は意外とできますのでぜひチャレンジしてみてください。今までやってこなかった事に、伸びし ろのチャンスは隠れているかもしれませんよ。

代表的な走力レベルの『Iペース』をお見せしますね。


■走力レベル(VDOT)別のIペース表■

● サブ2.5 (2:28:40) = VDOT : 67 → 3:05 /km ● サブ3.0 (2:58:47) = VDOT : 54 → 3:41 /km ● サブ3.5 (3:28:26) = VDOT : 45 → 4:16 /km ● サブ4.0 (3:59:35) = VDOT : 38 → 4:54 /km ● サブ5.0 (4:58:00) = VDOT : 29 → 5:34 /km

● サブ6.0 (5:56:30) = VDOT : 23 → 6:11 /km

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 4/6ページ

『Iペース (インターバル ペース / Interval Pace)』の活用方法、具体的な練習例

『Iペース』トレーニング(インターバルトレーニング)の代表的な練習は「3~5分間走」を繰り返す ことです。


時間を基準にするのもアリなんですが、日本の陸上・マラソン界においては距離を基準にしてイ ンターバルトレーニングを行うことが多いので、ここでは“距離基準の『Iペース』インターバルト レーニング”を紹介します。


(1) 1000m × 3~5本 インターバル
 1つ目は

1000m × 3~5本 インターバル

P(ペース):Iペース R(リカバリー):200m = 90~120秒 ジョグ


1000mを『Iペース』で走り(疾走)、200mのリカバリージョグ(90~120秒)を挟んで、再び 1000m疾走。これを3~5本繰り返すという感じ。


もう一度、『Iペース』をレベル別にまとめますね。


上のペース表を見てもらうと分かると思いますが、ちょうど疾走時間が「3~5分間」になってます よね。「1000m × 5本」という練習は、陸上長距離の世界ではもう“定番中の定番メニュー”なん ですが、それは「3~5分間走がVO2max(最大酸素摂取量)を向上させるのに有効」という運動生 理学理論に裏付けられているからなんです。


【5000mのレース結果を予測する鉄板メニュー!?】 『Iペース』はVO2maxを向上させる効果を持つペースですが、それと同時に「3~5kmのレース ペース」とほぼ同じとも言われます。この式を利用して、5000mに向けた練習として以下のよう な鉄板メニューが組まれることが多いです。


*1000m × 5本 インターバル

ペース(P) = 5000mでの目標レースペース

■具体的な練習メニュー例■

(1) 1000m × 3~5本

(2) 400m × 10~15本

【レベル別】I(インターバルペース)ってどれくらい? (1000m換算)

●サブ2.5ランナー (VDOT67) = 3分05秒 / 1000m ●サブ3.0ランナー (VDOT54) = 3分41秒 / 1000m ●サブ3.5ランナー (VDOT45) = 4分16秒 / 1000m

●サブ4.0ランナー (VDOT38) = 4分54秒 / 1000m

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 5/6ページ (例:18分20秒を目指すなら、3分40秒)

リカバリー(R) = 200m = 60~90秒


上記の練習を設定通りのペースおよびリカバリーでこなすことができれば、5000mのレースで目 標達成できる可能性が高いということになります。なお、レースでの再現性を高めるために、リカ バリーは短めです。


逆に、上記メニューで走れた結果によって現状の自分が5000mでどれくらいで走れそうかを予測 することもできますね。
(例:1000m×5本全て3分30秒, リカバリー80秒で走れた → 5000mの予測タイム = 17分30秒)

トラックで5000mを走る機会がある人や5kmのレースに出る機会がある人はぜひ参考にしてみて ください。


(2) 400m × 10~15本 インターバルまた、疾走時間が「3~5分間」より短くてもVO2max(最大酸素摂取量)を向上させるのに有効な 練習があります。

それが2つ目のこちら。

400m × 10~15本 インターバル

P(ペース):Iペース R(リカバリー):200m = 60~90秒 ジョグ

400mを『Iペース』で走り(疾走)、200mのリカバリージョグ(60~90秒)を挟んで、再び400m疾 走。これを10~15本繰り返します。


なお、400mの場合、『Iペース』はランナーのレベルによって以下のようになります。


1000mのインターバルと比べると、疾走時間が1~2分間となり、「3~5分間」より短い事が分か ります。しかし400mインターバルの場合は、繰り返しの回数を多くして、『Iペース』で走る総 距離を確保しています。

・1000m×5 の場合 → Iペースで走る総距離:5000m ・400m×15 の場合 → Iペースで走る総距離:6000m

【レベル別】I(インターバルペース)ってどれくらい? (400m換算)

●サブ2.5ランナー (VDOT67) = 1分08秒 / 400m ●サブ3.0ランナー (VDOT54) = 1分22秒 / 400m ●サブ3.5ランナー (VDOT45) = 1分34秒 / 400m ●サブ4.0ランナー (VDOT38) = 1分48秒 / 400m

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/6ページ

『Iペース』はVO2maxを向上させるのに最も適したペースです。1回の練習で『Iペース』で走る 総距離を5000~8000m程度確保しておくと効果的です。

また、疾走時間が短くなる400mインターバルの場合は、リカバリージョグの時間も短くする事で より効果が高まります(VO2max向上が見込める)。


まとめ :『Iペース(インターバル/Interval)』

1『Iペース』とは、

●キツいと感じるペース

●最大11~12分間継続できるペース

●3~5kmのレースペース

2『Iペース』トレーニング(インターバルトレーニング)は、

VO2max(最大酸素摂取量)を向上させ、最大スピードを養う効果がある。

また、マラソンのレースペースに対する“余裕度”が高まる。

3『Iペース』トレーニングの具体的な練習メニュー例は・・・

(1) 1000m × 3~5本

「解体新書」#17

(2) 400m × 10~15本

ABOUT ME
上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
株式会社SmilesMiles 代表取締役 1992年生まれ、鹿児島県出身。 2005年、中学時代より走り始めランニング歴は17年以上。 1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。 2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間40分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。 現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。 「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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