ペース走 / Pace Run|ぼっちランナーズ【BRC】

ペース走 / Pace Run

上原 一真

「解体新書」#09

3種類目は、「ペース走 (Pace Run)」。

ペース走はその名の通り「あるペースを設定して走ること」です。なお、どんなペースで走るかに よってその効果は変わってきます。

ウエハラ : ペース走では、必ず「どれくらいのペースで走るのか」を設定します。 その時の目的に応じて、狙った効果が得られるようなペースできちんと走るこ とに重点を置くのです。

マラソン初心者 : 無目的にダラダラ走るのではなく、ペースを意識して走るってことだね。

ウエハラ : そうですね。ペース走では、まず設定したペースを守ることが大事です。さら には、「どういう目的でどういうペースを設定するのか」を決めること自体 が大事なので、ペース走では計画性が求められますね。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/6ページ

例えば、以下の練習を行うと仮定します。
 12kmをマラソンのレースペース(Mペース)で走る。

この練習の目的は、「マラソンのレースペース(Mペース)に慣れる」ということです。 トレーニングの原理原則の中に、「特異性の原則」というものがあります。これは「トレーニン グした内容に対して、人間の身体は反応する(トレーニング効果が現れる)」というものです。


つまり、「マラソンのレースペースに慣れたい」なら「マラソンのレースペースで走ること」が最 も効果的。マラソンのレースペースで走ることによって、あなたの心肺機能や身体の動き(リズム) はそのペースに最適化されていきます(慣れる)。

同様に、「1km4分ペースで走ることに慣れたい」なら「1km4分ペースで走ること」。これが最 も効果的なのです。

マラソン初心者 :
お、おお・・・ めちゃくちゃ当たり前のことだね。

ウエハラ : 本質はいつもシンプルです。キリッ

一見、シンプルで当たり前のことのようですが、実はこれができていない人は多いです。

例えば、「マラソンペース(1km4分ペース)に慣れること」が目的の人が「1km3分30秒ペースで 走る」とか「1km4分30秒ペースで走る」といった練習をしたらどうなるでしょうか。

確かに「マラソンペースより速く走る(1km3分30秒)」も「マラソンペースより遅く走る(1km4分 30秒)」もそれはそれで効果はあります。

しかし、これでは「マラソンペース(1km4分)に慣れる」という目的は果たせていませんよね。 なぜなら、マラソンペース(1km4分)で走っていないから。

■「ペース走 (Pace Run)」の主な目的■

1 一定のペースに対して、心肺機能

身体の動き(リズム)を慣れさせる

2 ペース感覚を養成し、自分でペースをコントロール出来る力を身に付ける

3 一定のペースに対して、精神的に慣れる

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

3/6ページ

ウエハラ : 無目的にただガムシャラに走るだけがマラソン練習ではありません。 今の自分には何が必要なのかしっかり考えた上で、正しくペースを設定して走 りましょう。

2 ペース感覚を養成し、自分でペースをコントロール出来る力を身に付ける また、ペース走の派生系として「ビルドアップ走」というものがあります。常に一定ペースで走る 「一定ペース走」とは異なり、「ビルドアップ走」では、ペースをコントロールする力(ペースア ップする力)が求められます。

ペース走の派生系はいくつかあります。

上記のようにペースを変動させることで、ペース感覚を養い、また、ペースをコントロールする力 を身に付けることができるのです。

ペース感覚が発達して、ペースコントロール力が上達すると・・・

●単独走になっても、1人でペースを作って走れる。 ●ペースの上げ下げに強くなる。 ●上手くペース配分ができ、レース全体を賢く走れるようになる。

といったメリットがあります。

マラソン初心者 :
「ペース走(Pace Run)」って実際にどうやればいいの? 具体的な練習例は?

マラソン初心者 : あっ・・・ (心当たりがある・・・)

■ペース走の派生系■

●ビルドアップ走 (徐々にペースを上げていく)

●変化走 (意識的にペースを変化させる)

●ファルトレク (不整地や起伏のあるコースで自然とペースを変化させる)

※ファルトレクは細かくペース設定するわけではないので、ここで言う「ペース走」とはややズレ

ますが・・・

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

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ウエハラ : ペース走は言ってしまえば、「ペースを意識して走る練習」は総じて「ペース 走」と言えます。よって、様々なバリエーションのペース走が存在しますが、 ここでは代表的なものを4つ挙げておきます。

→Mペース

まずは、4000m ~ 8000m T(閾値)ペース走。 「ダニエルズ理論」に基づくと、T(閾値)ペースは、「20~30分程度継続できるペース」なので、 距離にすると「4000m~8000m」くらいになりますね。

・5分/kmペースで走る人であれば、4000m~6000m(20~30分)。 ・4分/kmペースで走る人であれば、5000m~8000m(20~32分)。

このくらいの設定にしておくと良いでしょう。 T(閾値)ペースで走る目的は「LT値(乳酸性作業閾値)の向上」つまり「ラクに走れる最速スピード の引き上げ」です。

2 12km ~ 16km Mペース走

続いて、12km ~ 16km Mペース走。

マラソン初心者 :
さっきと同じパターンか! 「マラソンのレースペース(Mペース)に慣れる」ことが目的だから「マラソンの レースペース(Mペース)で走る」ってことだね。

ウエハラ :
その通りです。 ちなみに、距離が「12~16km」である理由は・・・

一定のペースにおいて、普段のポイント練習で走れる距離 × 3 = (ピーキングをして臨む)レース時に走れる距離
*ピーキング = 調整

■「ペース走 (Pace Run)」の練習例■

1 4000m ~ 8000m 閾値ペース走 ※T(閾値)ペース

2 12km ~ 16km Mペース走 ※Mペース

3 12km ~ 20km ビルドアップ ペース走 ※Eペース

4 30km ビルドアップ ペース走 ※Eペース

Mペース

1 4000m ~ 8000m T(閾値)ペース走

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 5/6ページ

と言われているからです。つまり、フルマラソンに関して言えば、一定のペース(例えば4:14/km = サブ3ペース)において、

普段のポイント練習で走れる距離(約14km) × 3
= (ピーキングをして臨む)レース時に走れる距離 (42.195km)

ということになります。

マラソン初心者 : ということは・・・練習時に4:14/km(サブ3ペース)で14km走れたら、フルマ ラソン(42.195km)でサブ3できる可能性が高いってことか!

ウエハラ : 上記の計算はあくまで一つの推測式に過ぎませんが、ペースを意識するとこ のように目標や現状が可視化しやすくなりますよ。

3 12km ~ 20km ビルドアップ(E~M)ペース走

続いて、12km ~ 20km ビルドアップ(E~M)ペース走。 ビルドアップは徐々にペースを上げていく練習のことです。

2の12~16km Mペース走よりやや距離を伸ばし、その分最初はゆっくり。後半にかけて徐々にペ ースを上げていきましょう。

2kmごとや4kmごとにペースアップしていくのが定番ですね。

4 30km ビルドアップ ペース走 (“30km走”)

最後は、30km ビルドアップ ペース走。 ウエハラ :

いわゆる“30km走”というやつですね。

マラソン初心者 : ひぇ~。30km走・・・ 想像できないなぁ~

マラソン初心者 : OK!ペースを自分でしっかりコントロールできるようになりたいなあ~

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

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ウエハラ : 確かに30km走は中々ヘビーな練習ですが、ある程度練習が積めてきたらマラ ソン本番前にぜひ実施したい練習ですね。 30kmもの間ペースを持続できて、かつ余裕が残っていたのであれば、そのペ ースはほとんどあなたのモノになった(習得した)と言っていいでしょう。 レースでの再現性を測るのに有効な練習が“30km走”です。

マラソン初心者 : “30km走”は自分の現状を測るという側面もあるんだね。

[ペース走のメリット]

●それぞれのペースで走る事で、そのペースへの耐性、慣れを身に付ける事ができる。

●ペース感覚を養成し、ペースを自分でコントロールできるようになる。

[ペース走のデメリット]

●ペースを維持したりコントロールしたりするには、高い集中力が必要とされるため、1人で実

施するのが難しい。→複数人で行うのがオススメ。

ABOUT ME
上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
株式会社SmilesMiles 代表取締役 1992年生まれ、鹿児島県出身。 2005年、中学時代より走り始めランニング歴は17年以上。 1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。 2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間40分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。 現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。 「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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