STEP1. 自分が伸ばすべき身体スキルを明確にする

「解体新書」#26
前の章でも述べましたが、「練習の目的」次第で練習の内容や練習への取り組み方は大きく変わ ります。「練習の目的」とは、つまり「どの身体スキルを伸ばしたいか」ということです。
マラソン練習において考えるべき「身体スキル」とは、大きく以下の3つが挙げられます。
もちろん、細かいところを言えば「身体スキル」はもっとたくさんあるのですが、とりあえず基 本的なものはこの辺りにまとめられると思います。自分で練習メニューを作ることにまだ慣れてい ない段階では、とりあえずこの3つを押さえておきましょう。
マラソン初心者 : 最大スピード、スピード持久力、スタミナとりあえずは、この3つのスキルを 伸ばしていけばいいんだね! じゃあ、これらのスキルを伸ばしたいときはどんな練習をすればいいの?
◼ マラソン練習で伸ばすべき主な「身体スキル」◼
1. 最大スピード (VO2max = 最大酸素摂取量)
2. スピード持久力 (LT値 = 乳酸性作業閾値)
3. スタミナ
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」
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ウエハラ : これらの身体スキルを伸ばす練習は何かと聞かれたら、それこそ無限と言っても いいくらいに多くのバリエーションがあります。 しかし、代表的な練習メニュー、広く実践されている練習メニューもありますの で、ここではその一部を少し紹介しますね。
1. 最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)を高める代表的なトレーニング
→「1000m(Iペース)×5本」や「400m(Iペース)×15本」
2. スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)を高める代表的なトレーニング
→ 「2000m(Tペース)×3本」や「6~8km Tペース走 (30分間走)」
3. スタミナを高める代表的なトレーニング
→「30kmペース走」や「2~3時間LSD」
上記のようなものがそれぞれの練習目的に応じた代表的なトレーニングです。
1 最大スピード (VO2max = 最大酸素摂取量)
1つ目の身体スキルは「最大スピード」です。みなさんもきっと一度は聞いたことありますよね。
ただし、「最大スピード」という言葉ではやや曖昧なので、ここではもう少し科学的な言葉に言 い換えてみます。それが「VO2max = 最大酸素摂取量」です。解釈によっては「最大スピード」 と「VO2max」は完全イコールではないのですが、まあ一般的には同じと考えてもらって大きな 間違いではありません。 この「最大スピード(VO2max)」はマラソン練習では非常に重要で、マラソンの走力を決定する 3大要因の一つです。
マラソンは42.195kmという決められた距離を“いかに速く走れるか”という勝負になります。 「マラソンは長距離だからスタミナだけ鍛えればいいよね」と思われがちですが、もしあなたが マラソンで記録を求めるのであれば“いかに速く走れるか”つまり「スピードを鍛える」という考 え方も決して無視はできないのです。
「最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)」を高めるには、I(インターバル)ペースで走る練習 が最も効果的と言われています。 I(インターバル)ペースとは、ダニエルズ理論の“5種類のトレーニングペース”の一つです。
◼ Iペースの強度◼
●キツいと感じるペース
●最大11~12分間継続できるペース
●3~5kmのレースペース
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/7ページ I(インターバル)ペースで走ることによって、VO2max = 最大酸素摂取量の向上が期待できます。
もう少し具体的に見てみましょう。最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)を高める練習メニ ューとしては、例えばこのようなものがあります。
Iペースのような速いペースでのランニングを繰り返す練習を「インターバル」と言います。 Iペースランニングの間は、休息(レスト、リカバリー)を挟みます。この休息を長くするか短くする かによってもトレーニングの効果は変わってきます。
上記の練習(1000mや400m)であれば、休息(レスト、リカバリー)は
・200m ジョグ
・90~120秒 ジョグ といった設定をするのがオーソドックスです。
マラソン初心者 : 最大スピードを高めたいなら、Iペース(インターバル)トレーニング!
2 スピード持久力 (LT値 = 乳酸性作業閾値)
2つ目の身体スキルは「スピード持久力」です。 先ほどの「最大スピード」と似ているなと思われるかもしれませんが、実際は結構違います。
最大スピード(VO2max) … 瞬間的なスピード、長時間持続できない スピード持久力(LT値) … そこそこ速いペースを持続させる力、楽に走れる最速ペース
つまり、「スピード持久力(LT値)」は瞬間的な最大スピードではなく、そこそこ速いスピードを持 続させる力のことです。
マラソン初心者 :
なるほど! スピードがあっても、それを持続させる力がないとダメなのか!
◼ 最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)を高める代表的なトレーニング
◼
● 1000m(Iペース) × 5本 インターバル ● 400m(Iペース) × 15本 インターバル
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」
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ウエハラ :
その通りです。
「速いペースでかつ持続可能なペース」という意味では、 「スピード持久力」はレース本番でのパフォーマンスに直結する身体スキル と言っていいでしょう
マラソン初心者 :
おっけ!
「スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)」を高めるにはどんな練習すれば いい??
「スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)」を高めるにはズバリ、T(閾値)ペースで走る練習が最 も効果的です!
T(閾値)ペースとは、ダニエルズ理論の“5種類のトレーニングペース”の一つです。
T(閾値)ペースで走ることによって、LT値 = 乳酸性作業閾値の向上が期待できます。 もう少し具体的に見てみましょう。スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)を高める練習メニュ
ーとしては、例えばこのようなものがあります。
Tペースで走る練習を「閾値トレーニング」とも言います。 この「閾値」というのは「LT値 = 乳酸性作業閾値」のことですね。
また、Tペースでのランニングを休息を挟んで繰り返す練習を「クルーズインターバル」と言いま す。これらはシンプルに閾値ペース周辺で走るトレーニングによってLT値が高まるという考え方で す。
マラソン初心者 : スピード持久力を高めたいなら、Tペース(閾値)トレーニング!
◼ Tペースの強度◼
●20~30分間継続できるくらいのペース(練習時)
●60分間継続できるくらいのペース(レース時)
●終わるのが待ち遠しいペース
◼ スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)を高める代表的なトレーニング◼
● 2000m(Tペース) × 3本 クルーズインターバル
● 6~8km Tペース走 (30分間走)
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 5/7ページ
3 スタミナ
3つ目の身体スキルは「スタミナ」です。 これは言わずもがなですね。マラソンでは42.195kmをいう長い距離を走るわけですから、それ だけの距離を走破する「スタミナ = 持久力」が必須となります。
ここで言うスタミナは、「どれだけ長時間、身体を動かし続けられるか」というイメージです。 「最大スピード(VO2max))とは対極にある感じですね。
「スタミナ」を鍛えるトレーニングとしては以下のようなものがあります。
LSDとは、「ロング・スロー・ディスタンス (Long Slow Distance)」の略語で、「ゆっくり長く 走るトレーニング」のことです。
「スピードを高めたいなら、スピードを上げて走ればいい」と同じ理論で、スタミナを鍛えたい場 合はスタミナを高める為のトレーニングをする必要があります。スタミナとは「長く走る能力」 なわけですから、「長く走る能力(スタミナ)を鍛えたいなら、長く走ればいい」のです。
マラソン初心者 : どれくらい長く走ればいいの?
ウエハラ : 時と場合によりますが、LSDに関しては「2~3時間」を目安にすると良いで しょう。 なぜなら、マラソンのレース本番では最低でも2~3時間は走り続けるからで す。必ずしもマラソンと同じ距離走る必要はありませんが、マラソン本番と 同じくらいの時間身体を動かし続けることが大事です。
「30km ペース走」に関しては、やや「スピード持久力」的な要素も含まれますが、ここでは 「とにかく30kmという長めの距離を走り切ること」が大事です。なぜなら、ここでの練習の目 的は「スタミナを鍛えること」だからです。
もし「30km ペース走」を行う目的が「スピード持久力を鍛えること」であれば、30km走り切る ことよりも「決められたペースで走り続けること」が大事になります。 この場合、決められたペースが維持できなくなった時点でストップしてもOKです。なぜなら、 「決められたペースで走り続けること = スピード持久力」が練習の目的だから。
◼ スタミナを高める代表的なトレーニング◼
● 2~3時間LSD
● 30kmペース走
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/7ページ
マラソン初心者 :
同じ「30km ペース走」でも練習の目的によって取り組み方が変わってくるん だね。
ウエハラ :
はい。だからこそ、まず「練習の目的 = どの身体スキルを伸ばしたいか」を 明確にすることが大事なんです。
3つの身体スキル伸ばす練習をバランス良く取り入れる。
ここまで「3つの身体スキル」を解説してきました。 3つの身体スキルをどれくらいのバランスで鍛えるべきかは、人によって大きく異なるので一概に 決めつけることはできません。 しかし、練習のバランスを決める上で参考になる考え方もあります。
とはいえ、最終的には3つの身体スキルをバランス良く鍛えるというのが正解です。確かに、アプ ローチとしては「スピードを優先的に鍛える」「スタミナを優先的に鍛える」「不得意分野を克服 する」「得意分野を伸ばす」などいろんな考え方があります。
しかし、結局マラソンのレース本番で試されるのは、これらの“基本的な3つの身体スキル(最大ス ピード、スピード持久力、スタミナ)の総合力”なのです。マラソンのスタートラインに立つまで に、これらの3つのスキルをひたすら高めていきましょう!
1. 練習の目的(どの身体スキルを伸ばしたいか)によって、練習内容は変わる。
◼ “期分け(ピリオダイゼーション)”によって、鍛える身体スキルを決定する。
◼ 自分の不得意分野を優先的に鍛える。
◼ 自分の得意分野をより洗練させる。
【まとめ】“根拠のある練習メニュー”の作成 #STEP1
自分が伸ばすべき身体スキルを明確にする。
2. マラソン練習で意識すべき3つの身体スキルとそれぞれの代表的なトレーニング
1 最大スピード (VO2max = 最大酸素摂取量)
… 1000m (Iペース) × 5本、400m (Iペース) × 15本
2 スピード持久力 (LT値 = 乳酸性作業閾値)
… 2000m (Tペース) × 3本、6~8km Tペース走 (30分間走)
3 スタミナ
… 2~3時間LSD、30kmペース走
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 7/7ページ
3. 自分の状況に合わせて3つの身体スキルを伸ばす練習をバランス良く取り入れよう。
◼ “期分け(ピリオダイゼーション)”によって、鍛える身体スキルを決定する。
◼ 自分の不得意分野を優先的に鍛える。
◼ 自分の得意分野をより洗練させる。