STEP4. マイルストーンを設定する

「解体新書」#24
では、最後です。トレーニングでは、「現状」と「目標」のギャップを埋める必要があります。
しかし、だからと言っていきなり「目標」ラインで練習をし始めるのは無理がありますよね。そ こで大事なのが、「最終目標(大目標)」に到達するまでの間に「マイルストーン(小目標)」を立て ることです。
マラソントレーニングでは、いきなり走力が上がるわけではありません。走力アップには時間が かかります。最低でも3~5ヶ月は見積もっていた方が良いでしょう。言い換えると、3~5ヶ月かけ てコツコツと走力をアップさせていけば良いわけです。
というわけで、マラソンのトレーニング計画を考えるときは、必ず「段階を踏んで少しずつレベル アップすること」を意識しましょう。その段階(ステップ)ごとの“小目標”を設定することが、つま り「マイルストーンを設定する」ということです。
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[マイルストーン設定のイメージ]
現状VDOT (現在)
48.7 (フルマラソン推定タイム = 3時間15分)
マイルストーン (1ヶ月後)
50 (フルマラソン推定タイム = 3時間10分)
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【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/6ページ
マイルストーン (2ヶ月後)
51.5 (フルマラソン推定タイム = 3時間6分)
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「マイルストーン」は、モチベーション維持の役割を持つ。 また、マイルストーンを設定することのもう一つのメリットは「モチベーション維持に役立つ」と
いうことです。
マラソンは3~4ヶ月、半年、あるいはそれ以上の長い期間をかけて準備をしなければいけない“長 期戦”のスポーツです。それだけ長い準備期間があるわけですから、「最終目標」だけ見てしまう と途中でモチベーションや集中力が切れてしまいがちです。
Cさん :
た、確かに。 中々モチベーションを維持できないんだよなぁ。
ウエハラ :
そうですよね。 だから、「マイルストーン(小目標)」を設置して比較的短期的な視点を持つこ とがモチベーション維持に効果的なんです。
では、実際にマイルストーンを設定してみましょう。
[Cさん] 現状:フルマラソン3時間15分 現状VDOT = 48.7
目標:フルマラソン3時間切り(サブ3) = 2時間58分 目標VDOT = 54
1 まずは、VDOTを確認する。 Cさんの現状は、フルマラソン3時間15分。これをVDOTで表すと、現状VDOT = 48.7 となり ます。
マイルストーン (3ヶ月後)
53 (フルマラソン推定タイム = 3時間1分)
目標VDOT (4ヶ月後)
54 (フルマラソン推定タイム = 2時間58分)
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/6ページ
そして、Cさんの目標は、フルマラソンで3時間を切ること。つまりサブ3です。 ここでは「目標タイム = 2時間58分」とします。これをVDOTで表すと、目標VDOT = 54 とな ります。
なお、目標レースは4ヶ月後です。
Cさん :
4ヶ月かけて、「現状VDOT = 48.7」から「目標VDOT = 54」まで引き上げ るということだね!
2 次に、VDOTに応じたトレーニングペースを確認する。
次に、現状VDOTと目標VDOTそれぞれに対応するトレーニングペースを見てみましょう。 まず、現状。トレーニング初期はこのレベルからトレーニングしていきます。
[
次は、目標。4ヶ月後にこのレベルでトレーニングできるまで持っていきます。
Cさんのフルマラソンの自己ベスト = 3時間15分
現状VDOT (走力):48.7
現状VDOT=48.7に対応するトレーニングペース]
Eペース:5:46 ~ 5:14 /km
Mペース:4:37 /km
Tペース:4:21 /km
Iペース:4:00 /km
Rペース:1:30 /400m = 3:45 /km
Cさんのフルマラソンの目標タイム = 2時間58分(サブ3)
目標:4ヶ月後の◯◯マラソンで「サブ3(3時間切り)」
目標VDOT (走力):54
[目標VDOT=54に対応するトレーニングペース]
Eペース:5:14 ~ 4:38 /km
Mペース:4:14 /km
Tペース:4:00 /km
Iペース:3:41 /km
Rペース:1:22 /400m = 3:25 /km
ダニエルズ理論においては、トレーニングの目的や種類によって適切なトレーニングペースは異な るとされています。
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3 いざ、マイルストーンを設定する!
以下の2つのパターンでマイルストーン設定例を見ていきます。
パターン1:1ヶ月ごとに「1000m × 5本 Iペースインターバル」を実施 スピード練習の王道「1000m × 5本」は現状確認としても優秀なトレーニングです。 各ステップにおいてマイルストーンが達成できているか、確実にレベルアップできているか定期的 に確かめましょう。
パターン1:1ヶ月ごとに「1000m × 5本 Iペースインターバル」を実施
パターン2:1ヶ月ごとに「12~14km Mペース走」を実施
例)
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フルマラソンの自己ベストが3時間15分、
4ヶ月後のレースでの目標タイムが2時間58分(サブ3)であるCさんの場合
[現状VDOT=48.7]
1000m × 5本 インターバル | 設定ペース = 4:00 /km
[マイルストーン(1ヶ月後)]
1000m × 5本 インターバル | 設定ペース = 3:55 /km
[マイルストーン(2ヶ月後)]
1000m × 5本 インターバル | 設定ペース = 3:50 /km
[マイルストーン(3ヶ月後)]
1000m × 5本 インターバル | 設定ペース = 3:45 /km
[目標VDOT=54 (4ヶ月後)]
1000m × 5本 インターバル | 設定ペース = 4:14 /km
Cさん : 1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後それぞれこのレベルで走れるようにな ればいいんだね!
到達目標がはっきりしてるから頑張れそう!
パターン2:1ヶ月ごとに「12~14km Mペース走」を実施
「12~14km Mペース走」もマラソン練習の王道メニュー。
「1000m × 5本 インターバル」よりも“スピード持久力”が試されるトレーニングなので、マラソ ンレースでの再現性を測るにはこちらの方が向いているでしょう。しかし、やや距離が長いので秋
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 以降涼しくなってきてから取り組むのがおすすめです。
例)
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フルマラソンの自己ベストが3時間15分、
4ヶ月後のレースでの目標タイムが2時間58分(サブ3)であるCさんの場合
[現状VDOT=48.7]
12km Mペース走 | 設定ペース = 4:37~4:30 /km
[マイルストーン(1ヶ月後)]
12km Mペース走 | 設定ペース = 4:35~4:25 /km
[マイルストーン(2ヶ月後)]
12km Mペース走 | 設定ペース = 4:25~4:20 /km
[マイルストーン(3ヶ月後)]
14km Mペース走 | 設定ペース = 4:20~4:15 /km
[目標VDOT=54 (4ヶ月後)]
14km Mペース走 | 設定ペース = 4:15~4:10 /km
「本番ではこのペースで42.195km走るんだ」ということをイメージして、Mペースに対して今の 自分がどれだけ余裕を持って走れているのかを常に確認しましょう。
Cさん :
14kmだとおよそフルマラソンの3分の1の距離か。 そのMペースで3倍の距離を走れる余裕があるかどうかを確認するんだね。
ウエハラ :
「14km Mペース走」を目標Mペースで余裕を持って走れることが出来れ ば、マラソン本番でもそのペースで最後まで走り切れる可能性は高いと思い ます。
(あくまで、スタミナ練習もしっかり行なっていれば、の話。)
1. トレーニングの本質は、「現状」から「目標」までのギャップを目標期日までに埋めること。 2.「マイルストーン」とは、最終目標に到達するまでの課程に置く“小目標”
【まとめ】トレーニング計画の作成 #STEP4
マイルストーンの設定
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/6ページ
3. 「1000m × 5本」や「12~14km Mペース走」などの王道メニューで1ヶ月おきにマイルス
トーンを設定してみよう。
まとめ
マラソン トレーニング計画の立て方
1. 目標から「逆算」してトレーニング計画を組み立てよう。 2. 目標設定は「期日」と「到達ライン」を明確に。
3. トレーニング計画の作成方法
STEP1.
「現状VDOT」と「トレーニングペース」を把握する
STEP2.
「目標VDOT」と「トレーニングペース」を把握する
STEP3.
期分け (ピリオダイゼーション)
STEP4.
マイルストーンを設定する
「トレーニング計画」を考えて日々の練習を行うことで、日々の練習にも明確な目的意識を持って 取り組むことができます。目標までの道筋がはっきりした中でトレーニングを続けるのと、何も 考えずに計画性ゼロでトレーニングを続けるのとでは、その成果に大きな違いが生まれます。
みなさんも今一度、自分の目標までの道筋を再確認してみてはいかがでしょうか?