マラソンランナーの「エネルギー代謝」を学ぼう|ATP-CP系・解糖系・有酸素系|ぼっちランナーズ【BRC】

マラソンランナーの「エネルギー代謝」を学ぼう|ATP-CP系・解糖系・有酸素系

上原 一真

こんにちは。
ぼっちランナーズ【BRC】代表の上原です。

今回は、ちょっとマニアックなトピックですが、ランナーの「エネルギー代謝」について学んでいきます。

実はこういうマニアックな話、僕は好きなんです。運動生理学の知識をちゃんと身につけると、マラソンの練習に生きてくるので、最後は練習にどう生かすかにもつなげていきます。

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エネルギー代謝とは

走っている時に、人間がエネルギーを生み出す仕組みのことです。

走る時に限らず、僕たちの体は常にエネルギーを使っています。心臓を動かす、手を動かす、ものを考える、呼吸をする、しゃべる。本当に生きているだけでエネルギーを生み出して、生命を維持しています。

エネルギー代謝は、何かしらの物質をエネルギーに変換していく化学反応です。食べ物を食べて栄養素を吸収し、それをエネルギーに変えていきます。

今回は、この3つの流れでお話しします。

  1. エネルギーの源
  2. 3種類のエネルギー代謝システム(ATP-CP系、解糖系、有酸素系)
  3. マラソンランナーはこの知識をどう活用できるか

① エネルギーの源はATP

人間のエネルギーをどんどん分解していくと、最終的にはATPという物質に行き着きます。日本語ではアデノシン三リン酸。名前まで覚えなくてもいいですが、こういうエネルギーの源がある、ということを押さえておいてください。

ATPは、アデノシンにリン酸が3つくっついているイメージです。この3つのリン酸のうち1つを放出する時に、エネルギーが発生します。

リン酸が1つ抜けて2つになると、ADP(アデノシン二リン酸)になります。ATPからADPに変わる過程で、エネルギーが生み出される。これがエネルギー生成のメカニズムです。これから紹介する3種類のシステムも、結局は全部ATPを生み出す仕組みになっています。

② 3種類のエネルギー代謝システム

  • ATP-CP系:瞬発的で、大きなエネルギーを発揮する
  • 解糖系(無酸素性解糖系):比較的素早く、ある程度大きなエネルギーを発揮する
  • 有酸素系:持続的で、小さなエネルギーを発揮し続ける

ATP-CP系

持続時間は7〜8秒と言われています。主な原料は、クレアチンリン酸(CP)です。

主な活用場面は、陸上の100m走、幅跳びや高跳びなどの跳躍種目、投てき種目、高強度の筋トレ(HIITなど)。どれも、一瞬でどれだけ大きな力を発揮できるか、という運動ですよね。

ちょっとマニアックですが、ATPから放出されたリン酸は、クレアチンにくっついてクレアチンリン酸になります。このクレアチンリン酸がまたリン酸を戻すと、ADPがATPに戻る。このサイクルを回すことで、エネルギーを生み出し続けます。

持続時間は短いですが、一番素早く大きな力を発揮できるシステムです。

解糖系

解糖系には、無酸素性の解糖系と有酸素性の解糖系がありますが、有酸素性のものは次の有酸素系に分類して、ここでは無酸素性の解糖系のことを指します。

持続時間は33秒程度と言われています。主な原料は糖質(グリコーゲン)。主な活用場面は、400m、800m、1500m、5000mなどです。言葉の通り、糖を分解するので解糖系と言われています。

勘のいい方は、持続時間33秒なのに400mや800mはおかしいんじゃないか、と思ったかもしれません。これは、僕たちの体が一つのシステムだけで運動しているわけではないからです。

実際には、3つのシステムを併用しながらエネルギーを生み出しています。持続時間33秒というのは、解糖系だけを使った場合の話です。特に800mや1500mのような中距離種目は、3つのシステムをうまいバランスで使わないといけないので、結構テクニカルな種目なんですよね。

マラソンランナーにとっては、33秒は短すぎます。マラソンで解糖系を全く使わないわけではありませんが、基本的には、次の有酸素系をたくさん使っていきます。

有酸素系

原料がある限り、2時間以上など、かなり長い時間持続します。主な原料は糖質(グリコーゲン)と脂質(中性脂肪)で、レアなケースではタンパク質(アミノ酸)を原料にすることもあります。

主な活用場面は、5000m、10km、ハーフマラソン、フルマラソン、ウルトラマラソンなど、長時間運動する種目です。

名前の通り、酸素を使ってエネルギーを生み出すシステムです。呼吸で酸素を取り込んで、その酸素を使って糖質や脂質を燃やし、エネルギーに変えていきます。

糖質は、ご飯などの炭水化物。脂質は、いわゆる脂です。脂もちゃんとエネルギーになる大切な栄養素です。糖質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを生み出します。

有酸素系は、食事をとって消化するというプロセスも含む複雑な仕組みなので、エネルギーを発揮するまでに時間がかかります。ただ、ゆっくりエネルギーを生み出してくれるので、持続時間は長い。発揮するエネルギーは小さくなりますが、マラソンでは基本的にこの有酸素系が使われるので、ランナーにとって非常に大切です。

③ マラソンランナーはどう活用するか

マラソンランナーはほとんど有酸素系を使っているわけですが、じゃあ有酸素系の運動だけしておけばいいのかというと、そういうわけではありません。完走目的ならそれでもいいかもしれませんが。

マラソンは、42.195kmという決められた距離の中で、どれだけ速く走れるかが問題になります。いかに出力を上げるか、という意味では、スピードが必要になってくるわけです。

スピードの視点を持つと、大きなエネルギーを生み出さないといけない。つまり、無酸素的な要素も無視できないということです。

無酸素系のトレーニングもバランスよく

一般的に、マラソンは有酸素運動と言われているので、LSDのようにゆっくり長く走る練習さえしておけばいい、と考えがちかもしれません。でも、速く走るという視点を持つと、無酸素系のトレーニングも必要だと気づくはずです。

毎日やる必要はありませんが、ジョグの後にウインドスプリント(流し)でスピードを入れる。時折、1000mや400mのインターバル、レペティションで出力を上げて、体に刺激を入れる。そういったバランスを取る必要が出てきます。

実際、僕たちは3種類のシステムを併用しているので、3つをバランスよく鍛えていく視点も必要です。

目的に応じてトレーニングを組み立てる

エネルギー代謝システムを理解しておくと、今の自分に何が足りないのかを考える時に、トレーニングの組み立て方が見えてきます。

例えば、ダイエットしたい、脂肪を燃焼させたいのが第一の目標なら、有酸素系を高めるような運動をするべきです。ATP-CP系や解糖系では、脂質はほとんど使われません。強度を上げすぎると糖質を使う割合が増えるので、速く走るのではなく、ゆっくり長く走る方が脂肪燃焼効果は高いということです。

よく、筋トレとランニングのどちらが痩せるのか、という議論がありますよね。単体で考えるなら、より脂質を使う有酸素運動であるランニングの方が痩せると思います。ただ、筋トレで代謝を高めてからランニングをすれば、ランニングの脂肪燃焼効果も高まる。筋力もつけてランニングもするのが一番痩せる、というのが、エネルギー代謝の理屈から考えると理にかなっているんじゃないかなと思います。

逆に、スピードをつけたいなら、200mや400mのような短距離に近い運動もして、無酸素系を使う割合を増やす必要があります。LSDと比べれば1000mのインターバルの方が無酸素的な要素が強いので、そういった練習の比率を高めていく。目的に応じて、トレーニングを組み立てていけます。

スピード練習の前は糖質を補給する

無酸素的な運動では解糖系が使われ、糖質を原料にします。なので、強度が高い練習の時は、脂質よりも糖質をたくさん使います。

脂質はたくさん体に貯蔵できますが、糖質は貯蔵できる量が限られていて、枯渇しやすいです。スピード練習の前に糖質をちゃんと補給する必要があるのは、糖質を使う比率が高くなるからです。

逆に、有酸素運動では糖質をそこまで使わないので、そこまで補給する必要はないかもしれません。あえて糖質が枯渇した空腹状態でゆっくり長く走って、体内の脂質を使える体質をつくる、という空腹ランニングのやり方もありますよね。

空腹で走った方がいいのか、しっかり糖質を補給してから走った方がいいのか。結局は、時と場合、目的によります。負荷の高い練習なら糖質を補給すべきだと思いますし、ゆっくりした有酸素運動なら空腹状態で走るのもアリだと思います。こういうことを、エネルギー代謝の知識があれば論理的に考えられるようになります。

まとめ

エネルギーの源はATPで、リン酸を放出してADPに変わる瞬間にエネルギーが発揮されます。

エネルギー代謝システムは、瞬発的で大きなエネルギーを生み出すATP-CP系、比較的素早くある程度大きなエネルギーを生み出す解糖系、持続的で小さなエネルギーを発揮し続ける有酸素系の3種類。ランニングでは有酸素系がメインです。

スピードをつけたいなら無酸素系の運動を、脂肪を燃焼させたいなら有酸素系の運動を。ただなんとなくこの練習をやった方がいいかな、と思うよりも、エネルギー代謝を理解していることで、一つ一つの練習への目的意識が高まって、練習効果も高まると思います。

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それでは。

ぼっちランナーズ【BRC】
代表 上原一真

上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
Profile
株式会社SmilesMiles 代表取締役
1992年生まれ、鹿児島県出身。

2005年、中学時代より走り始めランニング歴は20年以上。ランニング指導歴は10年以上。

1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。
フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。

2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間35分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。

現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。
「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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