【レベル別】サブ4, サブ3.5, サブ3達成のための“根拠のある練習メニュー”の作り方

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「解体新書」#32
【レベル別】
目標達成ロードマップ (根拠のある練習メニューの立て方)
■本講義のテーマ■
1 サブ4, サブ3.5, サブ3達成に有効な練習メニューの作り方が分かる。
2 「練習の目的」「その練習を行う根拠」を明確にして、日々の練習に目的意識を持って取り組 めるようになる。
おさらい:根拠のある練習メニューの作り方
まず、おさらいとして「根拠のある練習メニュー」とはどういうものなのか、というところを振り 返ってみたいと思います。
「根拠のある練習メニュー」を作る上で意識すべきことって何?といったところを軽く整理した いと思います。
*練習の目的によって、練習の内容は必ず変わる → 「練習の目的」は明確にしなければならない
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/13ページ
まず、マラソン練習においてなぜ「練習の目的」が必要なのかと言うと、練習の目的によって、練 習の内容が変わるからです。「練習の目的」とは、細かいところまで挙げるとキリがないのです が、結局は以下のような言葉にまとめられると思います。
「どの身体スキルを伸ばしたいか」
では、マラソン練習において考えるべき「身体スキル」とは何でしょうか? 僕ウエハラは大きく以下の3つに分けられると考えています。
◼ マラソン練習で伸ばすべき主な「身体スキル」
1. 最大スピード (VO2max = 最大酸素摂取量) 2. スピード持久力 (LT値 = 乳酸性作業閾値)
3. スタミナ
そして、上記の3つの身体スキルを伸ばすにはそれぞれ異なるトレーニングをする必要があるので す。最大スピード、スピード持久力、スタミナ、それぞれの身体スキルを伸ばす具体的なトレーニ ングは後ほど紹介します。このように、「自分がどういう身体スキルを伸ばしたいのか = 練習の 目的」によって、練習内容が決まるのです。だから、まずは「練習の目的」を明確にする必要が あるのです。
「中・長期トレーニング計画」から日々の練習メニューに落とし込む
また、ご存知の通り、マラソン練習は“長期戦”です。3~4ヶ月、半年、あるいは1年以上という長 い目でトレーニング全体を考えなければいけません。練習メニューを作る時は1日1日の練習メニ ューを単体として見るだけでは不十分です。「中・長期トレーニング計画」と照らし合わせて 日々の練習メニューを考える必要があります。
目先の練習に集中する「短期的な視点」も大事ですが、定期的にトレーニング全体を俯瞰する 「長期的な視点」も持ちましょう。「長期的な視点を持つ」ということは、言い換えるならば 「自分が今行なっているトレーニングが、自分の目標達成への道すじに沿っているか」を確認し ようということです。
*“根拠のある練習メニュー”の作成方法【4つの手順】
では、おさらいの最後です。 “根拠のある練習メニュー”の作り方を4ステップで見ていきます。
◼
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 3/13ページ
◼ “根拠のある練習メニュー”の作り方◼
STEP1.
自分が伸ばすべき身体スキルを明確にする。
STEP2.
1週間のルーティンを決める。
STEP3.
ポイント練習を設計する。
STEP4.
ポイント練習以外の練習(つなぎ練習)を設計する。
この4ステップに沿って「サブ3達成のための練習メニュー」を作成していきます!
走力レベルの違い = 「練習の質と量」の違い
おっと。申し訳ありませんが、具体的に練習メニューを作る前にもう少し前置きをさせてくださ い。 今回はレベル別の目標達成ロードマップというテーマですが、ぶっちゃけサブ3を目指す場合で も、サブ3.5を目指す場合でも、サブ4を目指す場合でも練習メニューの作り方はほとんど変わり ません。一貫したトレーニング理論を用いて練習メニューを作るのであれば、走力レベルが違え ど練習内容は基本的には同じになるのです。
マラソン初心者 :
えっ。そうなの・・・!? サブ3ランナーって何か特別な練習をしてるんじゃないの・・・!?
ウエハラ : 実はサブ3ランナーも、もっと上のレベルのランナーも、特別に珍しい練習 をしているわけではありません。 僕の知人にも元実業団の方や箱根駅伝などハイレベルで走ってきたランナー がいますが、彼らも実は“当たり前の練習をひたすら継続している”のだけな のです。
人間が速くなる原理はある程度共通しています。これは「走力レベル」によって大きく変わる事 はありません。「これをすれば絶対速くなる」という“魔法の練習メニュー”はないのです。
マラソン初心者 :
で、でもでも。 じゃあ、サブ3ランナーと4時間超えるランナーの違いって何なの? 全く同じ練習をしていても、同じ走力にはならないよね?
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」
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ウエハラ : 確かにそうですね。先ほど「走力レベルが違っても練習内容は同じ」と言い ましたが、それは「練習内容」が同じというだけの話であって、もちろん細 部に走力レベルの差は発生します。 そして、その差はシンプルに「練習の質と量」なのです。
人間が速くなる原理はほとんど共通している為、サブ3ランナーでもサブ4をこれから目指すとい う方でも基本的にやる事は一緒です。 では、「走力レベルの違い」によって何を変えるべきか、何を調整すべきかというと、それは 「練習の質と量」です。つまり、走力レベルに応じた「練習の質と量」が存在するという事。
ウエハラ : 走力が上がる原理は、どのレベルでも同じ。であるなら、走力をアップさせ るためには、そのトレーニング原理に則って「質の高い練習を、豊富な量」 行なえば良いのです。 走力レベルの高い人は「当たり前の事を高いレベルで行なっている」という だけなのです。
マラソン初心者 :
な、なるほど・・・ 現実を突きつけられた感じだなぁ。“魔法の練習”や“努力しないで速くなる方 法”はないんだね。
でも、そっちの方が現実的で説得力があるな。
*練習の質 = ランニングペース
*練習の量 = ランニングの距離や時間
「練習の量」はシンプルに「ランニングの距離や時間」なので分かりやすいですよね。それに比 べると、確かに「練習の質」とはいったい何なのか、ちょっと分かりにくいかもしれませんね。
「練習の質」と言っても、それほど難しく考える必要はありません。 簡潔に言えば、「練習の質 = ランニングペース」です。
つまり、「質の高い練習」というのは「速いペースで走る練習」ということ。厳密には、もう少 し別の要素が組み合わさることもあるのですが、ここでは分かりやすく「練習の質 = ランニング ペース」という定義をしたいと思います。
練習の質は、ランニングペース。 練習の量は、ランニングの距離や時間。
この2つをそれぞれが目指す目標レベルに合わせて調整していくというわけですね。
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【デモンストレーション】
サブ4, サブ3.5, サブ3を達成したい人の為の「根拠のある練習メニュー」
の作成手順
それでは、お待たせしました。 これから実際に「サブ4達成の為の練習メニュー」を作っていきたいと思います。
◼ マラソンで3時間55分(サブ4)を目指すAさん◼
目標タイム:3時間55分
現状タイム:4時間15分
→ 「現状」と「目標」のギャップ = フルマラソンで20分
◼ マラソンで3時間25分(サブ3.5)を目指すBさん◼
目標タイム:3時間25分
現状タイム:3時間45分
→ 「現状」と「目標」のギャップ = フルマラソンで20分
◼ マラソンで2時間58分(サブ3)を目指すCさん◼
目標タイム:2時間58分
現状タイム:3時間13分
→ 「現状」と「目標」のギャップ = フルマラソンで15分
なお、すでに「中・長期トレーニング計画」は立てたものとして進めていきます。
STEP1. 自分が伸ばすべきスキルを明確にする
前の章でも述べましたが、「練習の目的」次第で練習の内容や練習への取り組み方は大きく変わ ります。「練習の目的」とは、つまり「どの身体スキルを伸ばしたいか」ということ。 そして、マラソン練習で伸ばすべき身体スキルとは以下の3つに大きく分けられるということでし たね。
◼ マラソン練習で伸ばすべき主な「身体スキル」◼
1. 最大スピード (VO2max = 最大酸素摂取量) 2. スピード持久力 (LT値 = 乳酸性作業閾値)
3. スタミナ
つまり、マラソン練習においては最大スピード、スピード持久力、スタミナをそれぞれ伸ばしてい くことが重要になってきます。では、上記の身体スキルを伸ばすために、具体的にどういったトレ ーニングを行なえばいいのでしょうか?
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/13ページ
トレーニング内容に関しては無限と言っていいほどバラエティがありますが、ここでは代表的なも ののみ紹介します。
1. 最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)を高める代表的なトレーニング →「1000m(Iペース)×5本」や「400m(Iペース)×15本」
2. スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)を高める代表的なトレーニング → 「2000m(Tペース)×3本」や「6~8km Tペース走 (30分間走)」
3. スタミナを高める代表的なトレーニング →「30kmペース走」や「2~3時間LSD」
マラソン初心者 : なるほど。確かに、全部どこかで聞いたことがある練習メニューだ。 それぞれの練習の背景には、「どの身体スキルを伸ばすか = 練習の目的」が あったんだね!
ウエハラ : 同じ練習メニューを行うにしても、目的意識を持っているかいないかで取り 組み方が変わってきますし、得られる効果もかなり変わってきますよ。
「今日はこの練習で最大スピード(VO2max)を鍛えるんだ」 「来週はあの練習でスタミナを鍛えるんだ」 「定期的にこの練習をしてスピード持久力(LT値)を高めよう」
といった具合に、一つ一つの練習に必ず「練習の目的」を持ちましょう。
STEP2. 1週間のルーティンを決める
では、次は「1週間のルーティン」を決めます。なお、すでに「1週間のルーティン」が決まって いる人はこの手順はスキップしてもOKです。
「1週間のルーティン」を確立させることで、トレーニングの実行可能性が高まります。マラソン 練習は、すべての練習でガムシャラに頑張る必要はなく、トレーニングの強弱が存在します。大ま かには、以下のような区分ができるでしょう。
では、この区分に沿って「1週間のルーティン」を作ってみましょう。
1 ポイント練習 = 強化練習
2 ポイント練習以外の練習 (つなぎ練習) = 体力レベル維持、コンディション調整の為の練習
◼ Aさん,Bさん, Cさんの1週間のルーティン◼
月 … 休養日 (アクティブレスト)
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火 … つなぎ練習 (ジョグ)
水 … ポイント練習(スピード系 or スピード持久力系)
木 … つなぎ練習 (ジョグ)
金 … 休養日 (完全休養)
土 … つなぎ練習 (ジョグ)
日 … ポイント練習(スタミナ系)
Aさん,Bさん, Cさんの場合、毎週水曜日と日曜日をポイント練習として設定しました。 そして、月曜日と金曜日を休養日として設定。 残りの火曜日、木曜日、土曜日はつなぎ練習となります。
◼ ポイント練習は週に何回すればいい??◼ ポイント練習の頻度については、もちろん個人差はありますが、僕ウエハラのオススメは「週2
回」です。例えば、週の真ん中である水曜日か木曜日に1回。週末の土曜日か日曜日に1回。とい った感じです。
ただし、ポイント練習はトレーニング強度が高く、怪我のリスクも高まるため、やり過ぎは禁物 です。一般の市民ランナーであれば、ポイント練習の頻度は多くても「週3回」に留めておきまし ょう。
また、当然ながらルーティンの作り方なんて、その人のライフスタイルによって大きく変わりま す。水曜日にポイント練習できない方もいるでしょうし、ポイント練習を2回もできない方もいる でしょう。というわけで、以下にアレンジ例を挙げておきます。参考にしてみてください。
アレンジ例1 週末に2日連続でポイント練習(セット練習) アレンジ例2 ポイント練習を1回に絞り、つなぎ練習の質を上げる。 アレンジ例3 ポイント練習1回 + 準ポイント練習2回
ルーティンを決めてしまったら、後はなるべく感情を挟まず粛々と実行するのみ、です。一時の 感情に流されないレベルまでルーティン化できたら強いですね。
STEP3. ポイント練習を設計する 続いて、STEP2でも触れたポイント練習についてもう少し詳しく設計していきましょう。
このポイント練習では、STEP1の「あなたが伸ばすべき身体スキル」を向上させる為のトレーニ ングを行います。マラソン練習においてはこのポイント練習を中心にトレーニング計画を組み立て るのが基本です。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 8/13ページ 何度も繰り返しになりますが、マラソンで意識すべき3つの身体スキルを伸ばす代表的なトレー
ニングは以下の通りでしたね。
1. 最大スピード(VO2max = 最大酸素摂取量)を高める代表的なトレーニング
→「1000m(Iペース)×5本」や「400m(Iペース)×15本」
2. スピード持久力(LT値 = 乳酸性作業閾値)を高める代表的なトレーニング
→ 「2000m(Tペース)×3本」や「6~8km Tペース走 (30分間走)」
3. スタミナを高める代表的なトレーニング →「30kmペース走」や「2~3時間LSD」
これをAさん, Bさん, Cさんの「1週間のルーティン」に当て込んでみましょう。Aさんのルーティ ンでは、ポイント練習は週2回(水曜日と日曜日)。ここに、その時の目的に応じた練習を当て込み ます。
水曜日が「最大スピード(VO2max)強化」を目的として「1000m(Iペース)×5本」。 日曜日が「スタミナ強化」を目的として「2~3時間 LSD」。
Aさん, Bさん, Cさんの走力レベルに応じて、設定ペースや走行時間に少し違いがありますが、基 本的な組み立て方はどのレベルであっても同じですね。
そして、ちゃんと練習メニューと練習の目的が一致しているか確かめましょう!
◼ Aさんのとある1週間のポイント練習 #1
◼
水 … 1000m(Iペース = 4:50 /km)×5本
[目的:最大スピード(VO2max)の強化]
日 … 2時間 LSD
[目的:スタミナの強化]
◼ Bさんのとある1週間のポイント練習 #1◼
水 … 1000m(Iペース = 4:30 /km)×5本
[目的:最大スピード(VO2max)の強化]
日 … 2時間30分 LSD
[目的:スタミナの強化]
◼ Cさんのとある1週間のポイント練習 #1◼
水 … 1000m(Iペース = 3:45 /km)×5本
[目的:最大スピード(VO2max)の強化]
日 … 3時間 LSD
[目的:スタミナの強化]
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※設定ペースについて※ ちなみに、Iペースとはインターバルペースのことで「VO2max(最大酸素摂取量)を向上させる最 適なトレーニングペース」です。
●Aさんの現在の走力 = 4時間15分 (VDOT = 35.2)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・5:03 /km
●Aさんの目標 = サブ4 (VDOT = 39.5)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・4:44 /km
●Bさんの現在の走力 = 3時間45分 (VDOT = 41)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・4:36 /km
●Bさんの目標 = サブ3.5 (VDOT = 45.9)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・4:12 /km
●Cさんの現在の走力 = 3時間13分 (VDOT = 49.3)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・3:58 /km
●Cさんの目標 = サブ3 (VDOT = 55)
に対応するI(インターバル)ペースは・・・3:37 /km
したがって、「1000m(Iペース)×5本」という練習において Aさんの場合は、5:03 ~ 4:44 /km
Bさんの場合は、4:36 ~ 4:12 /km
Cさんの場合は、3:58 ~ 3:37 /km というペースを基準に走ることになります。
では、別の1週間の練習メニュー例(ポイント練習のみ)をみてみましょう。
◼ Aさんのとある1週間のポイント練習 #2◼
水 … 6km Tペース走 (設定ペース:5:20 /km)
[目的:スピード持久力(LT値)の強化]
日 … 20km ペース走 (設定ペース:目標Mペース+15秒 /km = 5:45 /km)
[目的:スタミナの強化]
◼ Bさんのとある1週間のポイント練習 #2◼
水 … 6km Tペース走 (設定ペース:4:45 /km)
[目的:スピード持久力(LT値)の強化]
日 … 25km ペース走 (設定ペース:目標Mペース+15秒 /km = 5:05 /km)
[目的:スタミナの強化]
◼ Cさんのとある1週間のポイント練習 #2
◼
水 … 8km Tペース走 (設定ペース:4:00 /km)
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[目的:スピード持久力(LT値)の強化]
日 … 30km ペース走 (設定ペース:目標Mペース+20秒 /km = 4:30 /km)
[目的:スタミナの強化]
この1週間は、以下のようなポイント練習を組んでいます。 水曜日が「スピード持久力(LT値)強化」を目的として「6~8km Tペース走」。 日曜日が「スタミナ強化」を目的として「30km ペース走」。
この週の水曜日の練習は、最大スピード(VO2max)の強化ではなく、スピード持久力(LT値)の強化 が目的になっています。その目的の変化に応じて、練習内容も変わっていますね。
※設定ペースについて※ ちなみに、Tペースとは閾値ペースのことで「LT値(乳酸性作業閾値)を向上させる最適なトレーニ ングペース」です。
●Aさんの現在の走力 = 4時間15分 (VDOT = 35.2)
に対応するT(閾値)ペースは・・・5:34 /km
●Aさんの目標 = サブ4 (VDOT = 39.5)
に対応するT(閾値)ペースは・・・5:09 /km
●Bさんの現在の走力 = 3時間45分 (VDOT = 41)
に対応するT(閾値)ペースは・・・5:00 /km
●Bさんの目標 = サブ3.5 (VDOT = 45.9)
に対応するT(閾値)ペースは・・・4:34 /km
●Cさんの現在の走力 = 3時間13分 (VDOT = 49.3)
に対応するT(閾値)ペースは・・・4:18 /km
●Cさんの目標 = サブ3 (VDOT = 55)
に対応するT(閾値)ペースは・・・3:56 /km
したがって、「6~8km Tペース走」という練習において Aさんの場合は、5:34 ~ 5:09 /km (6km) Bさんの場合は、5:00 ~ 4:34 /km (6km) Cさんの場合は、4:18 ~ 3:56 /km (8km) というペースを基準に走ることになります。
また、Mペースとはマラソンペースのことを指します。したがって、日曜日のポイント練習では、 マラソンペースよりも幾分遅めのペースを設定し、余裕を持ちながら30kmを走るという練習に なります。 余裕のあるペース設定なので、ペースを維持できるかどうかのギリギリを攻めるわけではなく、ゆ とりを持って30km走りきることがポイントで、それはつまり「スタミナ強化」の練習となるわ けです。
練習の目的と実際の練習メニューの間にちゃんと一貫性があるか確認しましょう。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 11/13ページ
さて。ポイント練習の設計はこのような感じです。 実際にこれらの練習を自分が行なうことを想像してみるとわかると思いますが、ポイント練習は かなり高負荷なトレーニングです。しかし、その分、ポイント練習はあなたの走力アップに直結し ます。しっかり集中して取り組み、怪我をしないことも意識しましょう。
STEP4. ポイント練習以外の練習(つなぎ練習)を設計する
ポイント練習を設計したら、後は「ポイント練習以外の練習 (つなぎ練習)」の設計です。 「ポイント練習以外の練習」の目的は主に“体力レベル維持”や“コンディション調整”となります。 これは基本的には「ジョグ」でOKです。“つなぎのジョグ”と言ったりもします。
マラソン初心者 : “つなぎのジョグ”はどれくらいの距離走ればいい?ペースは?
ウエハラ :
正直それに関しては絶対的な答えはありません。 自分の身体と相談しながら「体力レベルが落ちすぎない」というラインを探 りながら練習することになりますね。 目安としては、「前の週のポイント練習と同じくらいの体力レベル」をキー プすることをイメージすると良いと思います。
※ポイント※ 自分の体力レベルを上げるのは、ポイント練習(強化練習)の時だけで十分。 “つなぎのジョグ”では頑張り過ぎない。
“つなぎのジョグ”で追い込み過ぎてオーバーワークになってしまっては本末転倒です。そのあたり の線引きが難しくはありますが、基本的には怪我しないように気楽に走ると良いでしょう。
ただし、“つなぎのジョグ”で基礎体力を作っているからこそ、ポイント練習に良い状態で取り組む ことができるのです。決して“つなぎのジョグ”を軽視しないように。
ウエハラ : とはいえ、まずは基準となるペースを教えて欲しいという方もいると思うの で、一つの目安としてダニエルズ理論のE(イージー)ペースを紹介しておきま す。
※設定ペースについて※
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 12/13ページ
Eペースとはイージーペースのことで「長距離ランナーの基礎体力を養成するのに適したトレーニ ングペース」です。
●Aさんの現在の走力 = 4時間15分 (VDOT = 41)
に対応するE(イージー)ペースは・・・7:12 ~ 6:34 /km
●Aさんの目標 = サブ4 (VDOT = 45.9)
に対応するE(イージー)ペースは・・・6:47 ~ 6:10 /km
●Bさんの現在の走力 = 3時間45分 (VDOT = 41)
に対応するE(イージー)ペースは・・・6:35 ~ 6:00 /km
●Bさんの目標 = サブ3.5 (VDOT = 45.9)
に対応するE(イージー)ペースは・・・6:02 ~ 5:29 /km
●Cさんの現在の走力 = 3時間13分 (VDOT = 49.3)
に対応するE(イージー)ペースは・・・5:42 ~ 5:11 /km
●Cさんの目標 = サブ3 (VDOT = 55)
に対応するE(イージー)ペースは・・・5:14 ~ 4:45 /km
しかし、Eペースが必ずしもその時のあなたの体調とマッチしない時も多いかもしれません。 つなぎ練習におけるジョグは自分の体調と相談しながら走ることが大事です。そのため、ここで 挙げたEペースはあくまで参考程度にとどめておくといいでしょう。
まとめ
サブ4, サブ3.5, サブ3達成のための「根拠のある練習メニューの作り方」
1. 「練習の目的」を明確にし、一つ一つの練習に“根拠”を持つ。
2. 中・長期的なトレーニング計画から日々の練習メニューに落とし込む。
3. “根拠のある練習メニュー”の作成方法
STEP1.
自分が伸ばすべきスキルを明確にする。
STEP2.
1週間のルーティンを決める。
STEP3.
ポイント練習を設計する。
STEP4.
ポイント練習以外の練習を設計する。
【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 13/13ページ
4. 走力レベルの違いによって練習メニューの作り方が大きく変わることはない。
→ 自分の現状と目標を基に「練習の質と量」を調整すれば良い。
いかがでしたか?以上のフレームワークに当てはめて練習メニューを考えるだけで、かなり精度の 高い練習メニューが作れると思います。
そして、精度の高い練習メニューを実践することは、あなたの走力向上に直結します。 走力が向上すれば、それはすなわちあなたの目標達成もグッと近くなるということです。
ぜひみなさんも“根拠のある練習メニュー”を作って、実践し、サブ4, サブ3.5, サブ3達成への最 短距離を走っていってください。