VO2max(最大酸素摂取量)とは?

- マラソントレーニングにおける「VO2max (最大酸素摂取量)」の重要性が分かる。
- なぜ「VO2max (最大酸素摂取量)」を向上させると、マラソンの記録向上に繋がるのかが分かる。
- 「VO2max (最大酸素摂取量)」を向上させるために、具体的にどんな練習をすれば良いかが分かる。
『VO2max (最大酸素摂取量)』とは?

VO2max (最大酸素摂取量)』ってよく聞くけど、 小難しくてイマイチよく分からない…
まず定義から言うと
一定時間内に酸素を体内に取り込める最大量
※ よく使われる単位 : ◯◯ ml / kg / min
(1分間に体重1kgあたり◯◯mlの酸素を取り込む事ができる)
人間が運動する時や走る時って、必ずエネルギーが必要になりますよね。その運動する為のエネルギーを生み出す時に酸素が使われます。
また、運動時のエネルギーの素になるのが「糖」であったり「脂肪」であったりするわけですが、 実は「糖」や「脂肪」がそれら単体で勝手にエネルギーになるわけではありません。
私たちが運動する時には、「糖」や「脂肪」を燃焼させてエネルギーに変換させるというプロセスを経る必要があります。そして、「糖」や「脂肪」をエネルギーに変換させる為に必要なのが、 酸素なのです。
※酸素を使わずに糖をエネルギーに変換させるシステムもありますが、ここでは割愛。
だから、私達って呼吸をしないと生きていけないですよね。あれは人間の身体がエネルギーを生み出す為に、呼吸して酸素を体内に取り込まないといけないからなんです。
マラソン等の有酸素運動においては、
『VO2max (最大酸素摂取量)』がめちゃくちゃ大事
「マラソンや長距離走は有酸素運動である」ってよく聞きませんか?
まさに「有酸素運動」という言葉通り、マラソンを走る時には酸素を大量に使います。
だからこそ、『VO2max (最大酸素摂取量)』すなわち、体内にどれだけ多くの酸素を取り込める かという能力がめちゃくちゃ大事になるわけです。
逆に、100m走や10秒未満の筋トレなどの瞬発的な運動は、マラソンと比べると酸素を要しない運動なので「無酸素運動」と言われています。
ちなみに、これらの無酸素運動は別のシステムを使ってエネルギーを生み出します。
※解糖系、リン酸系(ATP-CP系)など。

VO2maxが大事っぽいということは何となくわかったけど・・・ 『VO2max (最大酸素摂取量)』が向上したらどうなるの?
いろんな部分を端折って、超簡単に言ってしまうと
『VO2max (最大酸素摂取量)』が高くなる
→ “最大スピード”が上がる
という感じです。
最大スピードというのは具体的にどういうものかというと、「3~5分間走」におけるランニングペースのことです。距離にすれば、「1000m」くらい。
「VO2maxが向上すると、1000mのタイムが速くなる」ってくらいのイメージをしておくといい と思います。
例えば、1ヶ月前に1000mを走って4分00秒だったAさんが、その1ヶ月後に再度1000mを走って、3分40秒だったとします。
1000mのタイムが4分00秒→3分40秒に速くなったわけですね。
この場合、Aさんは「お。俺、1ヶ月前と比べて『VO2max (最大酸素摂取量)』が向上した なぁ」と喜んでOKです。

VO2maxが向上すると最大スピードが上がるんだね!
じゃあ、僕の将来の目標であるサブスリー(3時間切り)するためには、 どれくらいの『VO2max (最大酸素摂取量)』が必要なの??
はい。この辺り、気になるところだと思います。
有酸素運動プログラム「エアロビクス」を提唱したケネス・クーパー博士(アメリカの運動生理学 者)の研究結果によれば、以下の通り。
【レベル別】『VO2max (最大酸素摂取量)』の目安
- サブ2.5 (2 時間 28 分 56 秒)
→ VO2max (ml/kg/min) : 74 - サブ3.0 (2 時間 57 分 54 秒)
→ VO2max (ml/kg/min) : 62 - サブ3.5 (3 時間 26 分 52 秒)
→ VO2max (ml/kg/min) : 53 - サブ4.0 (3 時間 59 分 58 秒)
→ VO2max (ml/kg/min) : 46
■参考 : 最大酸素摂取量とマラソンの予想タイム
ということで、サブスリー(3時間)を達成する為には、VO2max : 62 ml/kg/min が一つの目安となりそうです。
※この数値は「VDOT」数値とは少し変わってきますので注意。
しかし、もちろんこれは目安に過ぎませんのであまり過信しないように。マラソンの走力を決定する要因は他にも様々なものがあるということを頭に入れておいてください。
『VO2max (最大酸素摂取量)』を測定する方法
ではそろそろ「自分のVO2max (最大酸素摂取量)ってどれくらいなんだろう?」と、気になり始めた頃ではありませんか?
ということで、「VO2max (最大酸素摂取量)を測定する方法」を3つ紹介しておきます。
- 専門施設で測定【本格派の方向け】
ランニングサイエンスラボ(東京)などの専門施設で測定できます。
測定マスクを装着しトレッドミルで全力走をする必要がありますが、かなり高度な測定ができます。 - 12分間走+計算式【再現性低め】
実際に12分間走をしなければいけないというのがハードルが高い上、やや正確性に欠ける印象です。
《VO2max推定式》
0.021 × [12分間走の走行距離] – 6.61
■参考 : 『マラソンの記録向上のために必要なトレーニングとは?「最大酸素摂取量」の理論と 実践』(RUNNING CLINIC) - スマートウォッチで測定【オススメ】
最近のスマートウォッチ(GARMINやCOROSなど)では、あなたのVO2maxの予測値を算出する事ができます。
あくまで予測値なので正確性にはかけますが、参考にはなります。
手軽に自分のVO2maxを可視化できるので、オススメです。
『VO2max (最大酸素摂取量)』を向上させるための具体的な練習は?

『VO2max (最大酸素摂取量)』を向上させるにはどうすれば良いの? 具体的にどんな練習をすれば良いの?
では、『VO2max (最大酸素摂取量)』を向上させる為には具体的にどういう練習をすれば良いの か?ということについて。
「ダニエルズ理論」によれば、以下のトレーニングが有効とされています。
繰り返す回数は初心者で3本程度で、慣れてきたら5本程度は実施した方が良いです。 (上級者は7~8本とかやる人もいます)
なお、「3~5分間走」のように時間で管理する代わりに、距離を決めて走る方が一般的に実践しやすいと思いますので、以下により具体的な練習メニューを2つ紹介します。
いずれのパターンも可能であれば、陸上競技場など距離が確実に分かる周回コースで行うのがオススメです。
1000m × 3~5本 インターバル
P(ペース) : I(インターバル)ペース = VO2maxペース
R(リカバリー) : 200m = 90~120秒 ジョグ
1000mをI(インターバル)ペース=VO2maxペースで走り(疾走)、200mのリカバリージョグ(90~120秒)を挟んで、再び1000m疾走。
これを3~5本繰り返すという感じ。
なお、I(インターバル)ペースはランナーのレベルによって違いますので、以下を参照。
【レベル別】I(インターバル)ペース=VO2maxペース ってどれくらい?
- サブ2.5ランナー (VDOT67) = 3分05秒 / 1000m
- サブ3.0ランナー (VDOT54) = 3分41秒 / 1000m
- サブ3.5ランナー (VDOT45) = 4分16秒 / 1000m
- サブ4.0ランナー (VDOT38) = 4分54秒 / 1000m
上のペース表を見てもらうと分かると思いますが、ちょうど疾走時間が「3~5分間」になってますよね。
「1000m × 5本」という練習は、陸上長距離の世界ではもう“定番中の定番メニュー”なんですが、それは「3~5分間走がVO2maxを向上させるのに有効」という運動生理学理論に裏付けられているからなんです。
400m × 10~15本 インターバル
P(ペース) : I(インターバル)ペース = VO2maxペース
R(リカバリー) : 200m = 60~90秒 ジョグ
400mをI(インターバル)ペース=VO2maxペースで走り(疾走)、200mのリカバリージョグ(60~90秒)を挟んで、再 び400m疾走。
これを10~15本繰り返します。
400mの場合、I(インターバル)ペースはランナーのレベルによって以下のようになります。
【レベル別】I(インターバルペース)=VO2maxペース ってどれくらい?
- サブ2.5ランナー (VDOT67) = 1分14秒 / 400m
- サブ3.0ランナー (VDOT54) = 1分28秒 / 400m
- サブ3.5ランナー (VDOT45) = 1分42秒 / 400m
- サブ4.0ランナー (VDOT38) = 1分56秒 / 400m
1000mのインターバルと比べると、疾走時間が1~2分間となり、「3~5分間」より短い事が分かります。
しかし400mインターバルの場合は、繰り返しの回数を多くして、I(インターバル)ペース=VO2maxペースで走る総距離を確保しています。
- 1000m×5 の場合
→ I(インターバル)ペース=VO2maxペースで走る総距離 : 5000m - 400m×15 の場合
→ I(インターバル)ペース=VO2maxペースで走る総距離 : 6000m
I(インターバル)ペース=VO2maxペースは、VO2maxを向上させるのに最も適したペースです。1回の練習でI(インターバル)ペース=VO2maxペースで走る総距離を、5000~8000m程度確保しておくと効果的です。
また、疾走時間が短くなる400mインターバルの場合は、リカバリージョグの時間も短くする事でより効果が高まります(VO2max向上が見込める)。
◆ まとめ ◆
『VO2max(最大酸素摂取量)』
- 体内にどれだけ多くの酸素を取り込めるかを表す指標で、 マラソンの走力を決定する3大因子の一つ
- 要するに、マラソンランナーにおいては“最大スピード”を表す。
- VO2maxを向上させるのに有効な具体的な練習は
● 1000m × 3~5本 インターバル
● 400m × 10~15本 インターバル