【マラソン】LT値(乳酸性作業閾値)とは?具体的なトレーニング方法も解説|ぼっちランナーズ【BRC】

【マラソン】LT値(乳酸性作業閾値)とは?具体的なトレーニング方法も解説

上原 一真
タケシさん
タケシさん

『LT値(乳酸性作業閾値)』ってよく聞くけど、 小難しくてイマイチよく分からない…なぜそんなに大事なんだろう?

ユイさん
ユイさん

『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させるにはどうすれば良いの? 具体的にどんな練習をすれば良いの?

本記事は、このような疑問を持っている方に向けた記事です。

『LT値(乳酸性作業閾値)』は、「マラソンの走力を決定する3大要素」の一つであり、この『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させることで、あなたの走力は確実に高まります。

マラソン初心者の内は、ただ何となく走っているだけでも、ある程度のところまでは記録は伸びていきます。が、何の戦略もないままに練習していては、どこかで成長が停滞してしまいます。

「効率よく走力を向上させるためには、何を意識してマラソントレーニングをすれば良いのか?」

その答えの一つが『LT値(乳酸性作業閾値)』です。

あなたのマラソントレーニングを一歩先のステージに進めていきたいなら、ぜひこの記事を最後まで読んでいってください。

本記事を読むメリット
  1. マラソントレーニングにおける「LT値(乳酸性作業閾値)」の重要性が分かる。
  2. なぜ「LT値(乳酸性作業閾値)」を向上させると、マラソンの記録向上に繋がるのかが分かる。
  3. 「LT値(乳酸性作業閾値)」を向上させるために、具体的にどんな練習をすれば良いかが分かる。

『LT値(乳酸性作業閾値)』とは?

タケシさん
タケシさん

『LT値(乳酸性作業閾値)』ってよく聞くけど、 小難しくてイマイチよく分からない…

まず定義から言うと

『LT値(乳酸性作業閾値)』とは

「血中の乳酸濃度が急激に上昇するポイント」

※ LT = Lactate Threshold

要するに、「血中乳酸濃度が急上昇するポイントがある」ということを押さえておけばOKです。そして、この「血中乳酸濃度が急上昇するポイント」が『LT値(乳酸性作業閾値)』というわけです。

ちなみに、血中乳酸濃度の数値で表すと、LT値は「2~4mmol/l」の間に存在します。

ちょっと難しいですね。

では、そもそも「乳酸」とは一体何モノなのでしょうか?

「乳酸」とは

激しい運動をする時に生じる有機化合物。

※ 無酸素運動を行う際、解糖系代謝の結果として生成されます。

うん、まだ難しいですね。

では、「乳酸が溜まる」と具体的にどうなるのでしょうか?

「乳酸が溜まる」と、どうなるか?
→ 呼吸が苦しくなってきて、身体が思い通りに動かなくなる。

例 : 5kmを走る時に3kmを過ぎたくらいから、身体の動きが鈍りみるみるペースダウン。

端的に言えば、以上のような感じです。

上記の例のような経験、みなさんもありませんか?
このような場合は、LT値を超えた(乳酸の分解が追いつかない)ランニングペースで走っていると考えられます。

要はLT値を超えた状態で走り続けると「呼吸が苦しくなり、身体が思い通りに動かなくなってペ ースを落とさざるを得ない」といったところです。

ここまで聞くと「乳酸 = 疲労物質」なんだね。

・・・と結論付けてしまいそうですが、実は最近の研究結果では、「乳酸 = 疲労物質」と一概には言えなくなっています。

なぜなら、乳酸はグリコーゲンに再合成されて、エネルギーとして再利用することが出来るからです。

つまり…

乳酸の分解が追いつかなくなると、血中乳酸濃度が急上昇する。

ということです。

では、もう一度『LT値(乳酸性作業閾値)』に話を戻します。

上記のように「乳酸 = 疲労物質」と一概に言えるわけではありません。
しかし、乳酸を分解して エネルギーに変換する作業が追いつかなくなると、私たちの体内では乳酸が急激に蓄積されていきます。

この乳酸が急激に蓄積され始めるポイントが、繰り返しになりますが、『LT値 (乳酸性作業閾値)』なのです。

勘の良い人はもうお分かりかもしれません。

つ・ま・り!

乳酸そのものが疲労の根源というわけではなく、疲労するかどうかは、乳酸を分解処理する能力の良し悪しによって決まるということです。

マラソン記録向上の為には
『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させるのは必須

タケシさん
タケシさん

LT値が大事っぽいということは何となくわかったけど・・・

『LT値(乳酸性作業閾値)』が向上したらどうなるの?

ここまでの説明を前提に、簡単に言ってしまうと

『LT値(乳酸性作業閾値)』が高くなると・・・

ラクに走れる最速ペースが上がる。

= 速いスピードでも維持して走ることができる

= 要は、「スピード持久力」が向上する。

という感じです。

『VO2max(最大酸素摂取量)』は「最大スピード」を表しますが、 『LT値(乳酸性作業閾値)』は「スピード持久力」を表します。

『VO2max(最大酸素摂取量)』を「1000mのスピード」とするならば 『LT値(乳酸性作業閾値)』は「5000mのスピード」を表します。

上原
上原

「VO2max = 最大スピード」を高めつつ、「LT値 = スピード持久力」も高めていくことで、「速いペースで走り続けられる力」が養われます。

「最大スピード」「スピード持久力」どちらも長距離走・マラソンにおいては大事ですよね。
だから「マラソンの走力決定3因子」の一つなんです。

自分の『LT値(乳酸性作業閾値)』はどれくらい?

タケシさん
タケシさん

ふむふむ。LT値とはつまり持久力なんだね。

じゃあ、僕のLT値ってどのくらいなんだろう??

「ダニエルズ理論」によれば、

『LT値(乳酸性作業閾値)』

20~30分間運動を継続できる強度(ランニングペース)

と言われています。

20~30分間継続できる運動と言えば、距離にして言い換えるならば 5kmのレースペースといったところでしょうか。

例1 : 5kmのレースを25分で走る人 → LT値:5分/km

例2 : 5kmのレースを20分で走る人 → LT値:4分/km

なお、箱根駅伝を走るくらいハイレベルのランナーだと、LT値で走れる時間は60分くらいまで伸びていきます。
なので、彼らはLT値のペースはハーフマラソンのレースペースが目安になります。

ちなみに、僕の現状のLT値は大体、3分10~15秒/kmくらいです。

「このくらいのペースなら20~30分間走れるかなぁ」
という感じで推測しています。

『LT値(乳酸性作業閾値)』を測るには、4000m~6000m走(20~30分間走)が有効

上記のように、LT値は何となく「このくらいだったら20~30分間走れるかなぁ」といった割と曖昧な測定をしがちです。

まあそれくらいの緩さでもいいのですが、「もっと明確に自分のLT値を知りたい!」という方 は、以下の方法を試してみるのもアリ。

『LT値(乳酸性作業閾値)』を測定する方法
  1. 20〜30分間走をほぼ全力で走る
  2. 4000m〜6000m走(上級者は8000m)をほぼ全力で走る
  3. 5kmのレースタイムから推測【オススメ】

① 20~30分間走をほぼ全力で走る

ダニエルズ氏の定義の通り「20~30分間継続できる強度(ランニングペース)」をそのまま確かめるっていう感じですね。

これをほぼ全力で走って実際にどれくらいのペースで走れたのか(例 : 4分/km、3分30秒/km)を 測定します。

② 4000m~6000m走(上級者は8000m)をほぼ全力で走る

①とほぼ同じではあるんですが、20~30分間に相当する距離が大体4000m~6000mあたりになると思うので、距離を決めて走るならこのくらいで設定して測るとOKです。

これをほぼ全力で走って実際にどれくらいのペースで走れたのか(例 : 4分/km、3分30秒/km)を測定します。陸上競技場などしっかり距離が分かる周回コースで実施してみましょう。

③ 5kmのレースタイムから推測【オススメ】

とはいえ、普段の練習では1も2も実施するが難しいという市民ランナーは多いと思います。
だって、20~30分間を全力で走るわけですからね。これはちょっとシンドイ。

ということで、僕のオススメは、5kmのレースを走ること。陸上記録会などでトラックの 5000mを走るのがベストですね。ロードレースであればなるべくフラットなコースが良いです。

レースだと自ずと全力で走ることになるので、より自分の現状の力が測りやすいと思います。その レースペースが大体あなたのLT値の目安となります。

『LT値(乳酸性作業閾値)』を
向上させる為の具体的な練習は?

ユイさん
ユイさん

『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させるには、どうすれば良いの?
具体的にどんな練習をすれば良いの?

では、『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させる為には具体的にどういう練習をすれば良いのか? ということについて。

「ダニエルズ理論」によれば、以下のトレーニングが有効とされています。

『LT値(乳酸性作業閾値)』を向上させるのに有効な練習
  1. 20分間走 (テンポ走)
  2. クルーズインターバル 【オススメ】

■参考 : 『ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版』(ジャック・ダニエルズ 著)

20分間走 (テンポ走)

1つ目は「20分間走 (テンポ走)」

『LT値(乳酸性作業閾値)』トレーニングの例1

20分間走 (テンポ走)

*P(ペース) : T(閾値)ペース

※距離にすると、4000m~6000m走 (上級者は8000m)

20分間走をT(閾値)ペースで実施します。

「T(閾値)ペース」とは「LT値と同等のペース」です。

LT値とは“20~30分間継続できるくらいのペース”なのだから、
「実際に20分間走っちゃえばいいじゃん!」という凄くシンプルな考え方ですね。

なお、T(閾値)ペースはランナーのレベルによって違いますので、以下を参照。

【レベル別】T(閾値)ペース ってどれくらい?

  • サブ2.5ランナー(VDOT67) = 3分21秒 / 1000m
  • サブ3.0ランナー(VDOT54) = 4分00秒 / 1000m
  • サブ3.5ランナー(VDOT45) = 4分38秒 / 1000m
  • サブ4.0ランナー(VDOT38) = 5分19秒 / 1000m

ただし、前述した通り普段の練習で取り入れるには、20分間走は強度が高すぎるかもしれません。なので、20分間走の中でペースを変化させるのもアリです。

例えば、、、

■「20分間走」応用編■

・前半10分間は、Tペースよりやや遅いペースで走る。
・後半10分間は、Tペースで走る。

といったように、現実的に取り組みやすいように各自調整するといいと思います。

クルーズインターバル

『LT値(乳酸性作業閾値)』トレーニングの例2

クルーズインターバル【オススメ】

*P(ペース) : T(閾値)ペース

「それでもやっぱり1発勝負で20分間走はシンドイかもな・・・」 という方にオススメなのが「クルーズインターバル」です。

「クルーズインターバル」とは

「T(閾値)ペース=LT値」のランニングを繰り返すトレーニング

「インターバル」というのはご存知の方も多いと思います。速いランニングと遅いランニングを繰り返すトレーニングですね。
「クルーズインターバル」は、インターバルの一種です。

「20分間ぶっ続けでT(閾値)ペースで走れ」と言われればシンドイですが、インターバルという手法で短い休息を挟むことで、T(閾値)ペースで走る総距離を増やすことが容易になります

これが、僕が「クルーズインターバル」をオススメする理由です。

「クルーズインターバル」では、例えば以下のように距離や本数を設定します。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓

クルーズインターバルの例1

1km × 8〜10本

*P(ペース) : T(閾値)ペース
*R(リカバリー) : 90〜120秒 ジョグ

クルーズインターバルの例2

2km × 3〜5本

*P(ペース) : T(閾値)ペース
*R(リカバリー) : 3〜5分 ジョグ

クルーズインターバルの例3

3km × 2〜3本

*P(ペース) : T(閾値)ペース
*R(リカバリー) : 5~6分 ジョグ

『LT値 (乳酸性作業閾値)』を向上させるには、
LT値ペース(Tペース)で走る総距離を増やす。

前回の講座では、『VO2max (最大酸素摂取量)』つまり「最大スピード」を養成する練習メニュ ーの例として「1000m×5本」や「400m×10~15本」を紹介しました。

それらの練習に比べると、「クルーズインターバル」は反復回数が多くなっています。

しかし、設定ペースはI(インターバル)ペースよりもやや遅いT(閾値)ペースで行います。

■1km × 8〜10本 → T(閾値)ペース走行距離トータル : 8〜10km

■2km × 3〜5本 → T(閾値)ペース走行距離トータル : 6〜10km

■3km × 2〜3本 → T(閾値)ペース走行距離トータル : 6〜9km

つまり、設定ペースをやや落として、その代わりにトータルのT(閾値)ペース走行距離を増やすということです。

ただし、「クルーズインターバル」1回の実施においてT(閾値)ペースで走る総距離は10kmを上限にしておきましょう。

これ以上走るとややオーバートレーニング気味です。怪我のリスクも高まりますので要注意です。

余談 :
日本ではあまり浸透していない
「閾値トレーニング」!?

余談ですが、現状として日本でこの練習を取り入れている市民ランナーはかなり少ないのではな いのでしょうか。

その原因は恐らく、速いスピードを出して短く走るよりもゆっくり長く走りたいというランナーが多いからだと思います。

かく言う僕もそう思ってしまうタイプなのですが、やっぱりレースペースやTペース(LT値)で走る 練習も積んでいかないとレース本番での再現性が高まりません。

逆に今までT(閾値)ペースで走る練習 =「閾値トレーニング」をしてこなかった方はこれを取り入れることによってマラソンの記録が飛躍的に向上するかもしれませんね。

世の中には、様々な種類のマラソントレーニングが存在します。

それぞれのトレーニングがどういう効果をもたらすのか、このトレーニングでどういった部分を 鍛えたいのか。目的意識を持って、様々な練習に取り組んでみると良いと思います。

◆まとめ◆
『LT値(乳酸性作業閾値)』

『LT値(乳酸性作業閾値)』
  1. 体内の血中乳酸濃度が急上昇するポイントで、このポイントを超えると乳酸が一気に蓄積し呼吸が苦しくなり始め、身体が思い通りに動かなくなってくる。
    マラソンの走力を決定する3大要素の一つ。
  2. 20~30分間継続できるランニングペースとほぼ等しい。
    5000mのレースタイムがちょうど良い基準になる。
  3. LT値が向上すると、“ラクに走れる最速ペース”が上がる。
    → “スピード持久力”が向上する。
  4. LT値を向上させるのに有効な具体的な練習は
    ●20分間走 (テンポ走)
    ●クルーズインターバル

それでは。

あなたのランニングライフがより充実したものになることを心より願っています。

ぼっちランナーズ【BRC】
代表 上原一真

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上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
Profile
株式会社SmilesMiles 代表取締役
1992年生まれ、鹿児島県出身。

2005年、中学時代より走り始めランニング歴は20年以上。ランニング指導歴は10年以上。

1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。
フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。

2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間35分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。

現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。
「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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