練習は物足りないくらいでちょうど良い|ぼっちランナーズ【BRC】
コラム(BRC通信)

練習は物足りないくらいでちょうど良い

上原 一真

先日、僕が運営するコミュニティBRCのメンバーの方からマラソン完走のご報告をいただきました。

実はこの方、レースの3週間ほど前に股関節に違和感が出てしまい、レースの直前までほとんど走ることができなくなってしまったんです。

それまではしっかりと練習できていたんですが、過度な練習が仇となって股関節に違和感が発生し、レース直前になってブランク(空白期間)が開いてしまいました。

「せっかく良い練習をしていたのに、怪我をしてしまった…」

「あのまま練習を続けていたら、もっと良い結果が出ていたはずなのに…勿体ない…」

あなたもこのような経験、ありませんか?

これがいわゆる「オーバーワーク」というやつで、これはもう本当によくある話なんです。

冒頭に紹介した方も、むしろそれまでの練習が「出来すぎて」いたんですね。

「練習が出来すぎている」って聞くと

「え?それって良いことじゃないの?」

と思う方がいるかも知れませんが、違います。

マラソントレーニングは「適正なトレーニング負荷をかけること」が大事なのであって、

「できるだけ速く走れば良い」

「とにかくたくさん走れば良い」

「休みなく、毎日毎日走り続ければ良い」

というものではないのです。

では、適正なトレーニング負荷とは何か。

それは、、、

———————

・適正な運動強度(ランニングペース)

・適正な運動量(走行時間,走行距離)

・適正な運動頻度(ランニングの頻度,反復回数)

———————

この3要素の掛け算で決まります。

つまり「オーバーワーク」の原因は大抵以下の3つです。

———————

・トレーニング量が多過ぎた
→過度な走行距離

・トレーニングの強度が高過ぎた
→過度に速いランニングペース

・トレーニングの頻度が多過ぎた
→休みなく走り続けた

———————

この「トレーニング負荷」の見極めがものすごく大事で、ここを見誤ると人間はいとも簡単に「オーバーワーク」に陥ります。

特に努力家の方、真面目な方ほど、この「オーバーワーク」の罠にハマってしまいがちなのですが、こういった方は

「お。今日は調子良いな。もっとたくさん走っちゃえ」

「ペースは速ければ速いほど効果がある。いけるところまでガンガンスピード出すぞ!」

といった思考で練習をしてしまいがちです。

しかし、このようにその場の思いつきや勢いでガンガン走ってしまうと、本来の適正なトレーニング負荷を超えてしまい、「オーバーワーク」そして怪我のリスクが一気に高まります。

かく言う僕も昔は、この「オーバーワーク」というミスを何度も何度も繰り返してきました。

「走れば走るほど強くなる」

という神話を信じて、血尿が出るほど走っていました。

しかし、トレーニング負荷のバランスが崩れてしまうと、怪我は繰り返すし、疲労は回復しないし、疲労が回復していないから良い練習もできないし、、、の悪循環に陥ってしまいました。

「練習すればするほど、足が遅くなる」

という現象が起きていたんですね。

そんな失敗を繰り返してきた僕だからこそ「適正なトレーニング負荷」というものにはこだわりがあります。

そして、16年以上「オーバーワーク」というリスクと向き合ってきた僕がたどり着いた結論。

それが、、、

「練習は物足りないくらいでちょうど良い」

ということです。

僕が作る練習メニューは割と保守的というか、堅実的というか。

そこまで攻めたトレーニングメニューは作らないんです。

特に設定ペースは緩め。

BRCメンバーにはいつも「余裕を持って走ってください」と言っています。

すると、

「上原さんの設定ペースはいつも甘いっすよ」

「俺、もっと走れるっすよ」

「そんなんじゃ強くなれないっすよ」

的なことを言われることもあります(BRCメンバーの方ではないですよ)。

でも、

僕が指定した設定ペースを守らずに突っ走ってしまう人は大抵どこかで怪我をします。

僕が指定した練習量を無視して、盛りだくさん走ってしまう人も大抵どこかで怪我をします。

まあ確かに、中には僕の予想を超えてそのまま乗り切っちゃう人もいますが、そういう人たちは元々身体能力に優れている方々だったりするので稀ですね。1割もいません。

僕は、単体の練習でどれだけ頑張るかよりも、トレーニング全体の流れで良い練習を“継続”できているかを重視しています。

だから、一発の練習を120%の力で走ったとしても、その結果怪我をしてトレーニングの“継続”が途切れてしまうことが一番ダメ。

それよりは70~80%の練習を長期的に“継続”する方がよっぽど良い。

その方が何倍も安全に、堅実に、成果につながります。

いわゆる「腹八分の練習」というやつです。

「過ぎたるは及ばざるが如し」

何事もやり過ぎはダメですね。

冒頭に紹介した方は、幸いにも違和感が出た時点でしっかり修正できました。

違和感が出てからは無理をせずに休養・回復に努めたことで、今回は無事にフルマラソンを完走。

お疲れ様でした。

無事に完走できて良かったです。

が、やっぱり理想は「怪我なく堅実にトレーニング」したいもの。

そのためにも長期的な目線でトレーニング全体を捉えて「徐々にアクセルを踏み続ける」ことが大事です。

本人も「いつもどこかで焦っていた」と振り返り、「もっと余裕を持って練習すること」の必要性を感じたようです。

これは決してこの方だけの問題ではないと思います。

似たような経験をしている方を僕は本当にたくさん見てきました。

それくらい「あるある」な話なんです。

もしあなたにも心当たりがあったら、気をつけてくださいね。

心当たりがなくても、「そんなことがあるんだなー」と頭の片隅に置いてもらえると良いかなと思います。

それでは、本日はこの辺で。

おしまい!

上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
Profile
株式会社SmilesMiles 代表取締役
1992年生まれ、鹿児島県出身。

2005年、中学時代より走り始めランニング歴は20年以上。ランニング指導歴は10年以上。

1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。
フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。

2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間35分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。

現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。
「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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