あなたの走力はどのくらい?ダニエルズのVDOT理論|ぼっちランナーズ【BRC】

あなたの走力はどのくらい?ダニエルズのVDOT理論

上原 一真

↓動画での解説はこちら↓

「解体新書」#12

■本講義のテーマ■

1マラソントレーニングにおける「VDOT」が何か、その重要性が分かる。 2自分の「VDOT」(=走力)が分かる。 3「VDOT」を実際の練習でどのように活用すれば良いかが分かる。

『VDOT』とは何か?その重要性とは?


マラソン初心者 : 『VDOT』ってよく聞くけど、小難しくてイマイチよく分からない… 『VDOT』を理解したらどんな良いことがあるの?

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 2/10ページ まず、『VDOT』について、最低限覚えておきたいことを3つ挙げておきます。実際、これが結論

のようなものです。
 ■

1

では、この3項目をそれぞれサクッと解説していきますね。

1『VDOT』= “走力” 簡潔に言えば、『VDOT』=“走力”です。

“走力”といってもそれはタイムで表す訳ではありません。確かにタイムを基に計算されるものでは ありますが、『VDOT』はタイムと「VO2max」の値を照らし合わせた指標です。

マラソンのタイムなどは、あくまで「一つの結果」でしかないのに対し、『VDOT』はその人の 能力に焦点を当てたより属人的な指標です。

例えば、マラソンでサブ3(3時間切り)で走れるような人達は大体どの程度のVDOTを備えている のでしょうか?

ずばり。
サブ3ランナーは、「VDOT = 54 」と言われています。 サブ3.5ランナーであれば、「VDOT = 45」
 サブ4.0ランナーであれば、「VDOT = 38」です。

表にまとめました。
↓↓↓
サブ2.5 (2時間28分40秒) → VDOT : 67 サブ3.0 (2時間58分47秒) → VDOT : 54 サブ3.5 (3時間28分26秒) → VDOT : 45 サブ4.0 (3時間59分35秒) → VDOT : 38


■参考:『ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版』 / ジャック・ダニエルズ 著 


2 様々な距離のレースで、どれくらいのタイムで走れるか推測できる。 さらに、『VDOT』のめっちゃ便利なところは、あるレースでのタイムから計算して、異なる距離 のレースでどれくらいのタイムで走れるかが推測できる。

『VDOT』とは??■

『VDOT』

=

“走力”

2様々な距離のレースで、どれくらいのタイムで走れるか推測できる。

3練習でどれくらいのペースで走れば良いか(5種類のトレーニングペース)が分かる。

という点です。どういうことでしょうか。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 サブ3(3時間切り)のレベルを考えてみましょう。

フルマラソンを全力で走ってサブ3で走れる人は、

・ハーフマラソン ・10km
・5km ・3000m ・1500m

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それぞれの距離のレースを「全力で」走った時にどれくらいのタイムで走れるのでしょうか? 気になりませんか?

 ※単純に「サブ3の一定ペース(4:15/km)で通過するタイム」という訳ではありません。それぞれ を「全力で」走った時のタイムです。

答えは、以下の通り。

■サブ3レベルのランナーのそれぞれの距離での推測タイム■ [基準VDOT = 54 (フルマラソン = 2時間58分47秒)] ・ハーフマラソン = 1時間25分40秒
・10km = 38分42秒

・5km = 18分40秒
・3000m = 10分47秒
・1500m = 5分02秒

 このように、基準のVDOTから計算して、様々な距離でどれくらいで走れるかということが分かる のです。 これがどのように便利なのかというと、要するに、自分の走力(実力)を知るためにわざわざ毎回フ ルマラソンを走らなくても良いということなんです。

フルマラソンって1回走るだけでもかなりダメージが大きいですよね。でも、ハーフマラソンや 10kmレースなら比較的何度でも挑戦しやすい。

 だから、そのハーフマラソンや10kmレースからフルマラソンのタイムを予測すれば、自分の現状 の力が簡単に把握できるということです。

サブ2.5、サブ3.5、サブ4.0についても同様の予測タイムをまとめますね。 ↓↓↓

● サブ2.5 = VDOT67

マラソン 2:28:40

ハーフ 1:11:00

10km 32:11

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 4/10ページ

5km 15:29

3km 8:55

1500m 4:10

● サブ3.0=VDOT54

マラソン 2:58:47

ハーフ 1:25:40

10km 38:42

5km 18:40 3km 10:47

1500m 5:02

● サブ3.5=VDOT45

マラソン 3:28:26

ハーフ 1:40:20

10km 45:16

5km 21:50 3km 12:40

1500m 5:56

● サブ4.0=VDOT38

マラソン 3:59:35

ハーフ 1:55:55

10km 52:17

5km 25:12 3km 14:41

1500m 6:54

■参考:『ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第3版』 / ジャック・ダニエルズ 著 


あなたの『VDOT』はどれくらいになりそうですか?自分の『VDOT』の調べ方については後で も紹介しますが、今の内に何となくイメージしてみてください。

3 練習でどれくらいのペースで走れば良いか(5種類のトレーニングペース)が分かる。 さらに、『VDOT』のめっちゃ便利なところ。それは・・・

●練習でどれくらいのペースで走れば良いか分かる。 ●どれくらいのペースで練習できれば目標達成できるか分かる。


 ということです。めちゃくちゃ便利じゃないですか?


ところが、ご存知の通りマラソン練習には様々な種類のトレーニングがありますよね。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 5/10ページ

なので、そのトレーニングの種類によって自分が練習で走るべき「適正ペース」は変わってきま す。

では、トレーニングペースの種類はどのようなものがあるのでしょうか?

「ダニエルズ理論」では、“5種類のトレーニングペース”が紹介されています。

■ダニエルズ理論の“5種類のトレーニングペース”■ 1Eペース(イージーペース/Easy Pace) 2Mペース(マラソンペース/Marathon Pace) 3Tペース(閾値ペース/Threshold Pace) 4Iペース(インターバルペース/Interval Pace) 5Rペース(レペティションペース/Repetition Pace)

それぞれのペースの解説は後ほど。

自分の『VDOT』(=走力)を知るにはどうすればいい?【2つ紹介】

マラソン初心者 :
『VDOT』は要するに、「走力」のことなんだね しかも距離の違うレースでどれくらいのタイムで走れるか予想が出来て、さら に練習時の適正ペースまで分かるということか・・・!! 僕も自分の『VDOT』(=走力)が知りたい!

はい。ここまで来たら、自分の『VDOT』(=走力)知りたいですよね?
 では『VDOT』の調べ方について2つ紹介します。

■自分の『VDOT』を知る方法■
1 オンラインサービスの「VDOT計算ツール」を使う
2 書籍『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を読む

1 オンラインサービスの「VDOT計算ツール」を使うまず1つ目は、オンラインで簡単に自分のVDOTを調べる方法。無料です。

僕が使っているオンラインの「VDOT計算ツール」はこちら。
→ 『Jack Daniels’ VDOT Running Calculator』/ Run SMART Project

 英語サイトではありますが、使い方は簡単なので英語が分からない方でも単語さえ覚えれば問題 なしです。

2 書籍『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』を読む

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 6/10ページ

次は、書籍で調べる方法。
→ 『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』 / ジャック・ダニエルズ 著

ぶっちゃけ無料で手っ取り早くVDOTを調べたいだけであれば、1つ目で紹介したオンライン 「VDOT計算ツール」を利用すればOKです。

ただし、「VDOT計算ツール」では特定のタイムで検索した分しか分かりません。その一方で、 書籍の『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』には、「VDOT表」が記載されており様々なレ ベルのランナーに対応したVDOTが一目で分かります。

また、もちろんそれだけではなくこのブログでは紹介しきれないような深いところの解説までた っぷり収録されていますので、ランナーであれば手元に1冊置いておきたい良書ですね。

『VDOT』の活用方法~実際の練習(トレーニング)に活かそう 


マラソン初心者 : 『VDOT』の重要性も分かった!自分の『VDOT』(=走力)も分かった! あれ。でも、実際の練習でどう活用すればいいの?

『VDOT』についてはだいぶ理解できたのではないでしょうか?

では、ここからは『VDOT』を理解した上で、実際のマラソントレーニングにどう活用していくか というところを解説します。

まず、ポイントは

1「現状VDOT」
2「目標VDOT」

この2つの「VDOT」を理解して、常に意識し続けることです。 その上で、「現状VDOT」から「目標VDOT」へと自分のVDOTを引き上げていくということで すね。

「ダニエルズ理論」においては、この考え方が基本となります。

■『VDOT』の活用方法 (目標設定~目標達成まで)■

1現状のタイムから、自分の「現状VDOT」を把握する

↓↓↓

2自分の「目標タイム」に対応する「目標VDOT」を確認する

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 7/10ページ

↓↓↓

3設定した「目標VDOT」における“5種類のトレーニングペース”を確認する

↓↓↓

4設定した「目標VDOT」における“5種類のトレーニングペース”を実際の練習でこなす

↓↓↓

5「目標VDOT」のトレーニングペースで練習がこなせるようになったら、「目標タイム」達成の

可能性は高い!

それぞれのステップをサクッと説明していきますね。

1 現状のタイムから、自分の「現状VDOT」を把握する

マラソンに限らず、仕事も勉強も筋トレも何でもそうですが「現状分析」は非常に重要です。 「目標設定」と「現状確認」は必ずセット。これはかなり本質的な事を言っています。

という事で、「現状VDOT」を確認するわけですが、

『Jack Daniels’ VDOT Running Calculator』/ Run SMART Project

上の「VDOT計算ツール」に“あなたの現状になるべく近いタイム”を入力する事で、あなたの「現 状VDOT」を算出することができます。

つまり、

●半年以内に記録したタイム ●1~2週間後に走っても出せそうなタイム

このあたりのタイムです。ここで見栄を張って背伸びした(実際より速い)タイムを入力してはいけ ません。

背伸びしたタイムを入力したところで、それは現状とかけ離れたものであり「現状VDOT」とは 言えません。正しく現状分析しましょう。

マラソン初心者 : 僕は半年前の3月にフルマラソンを3時間10分で走ったからこれを基準に VDOTを計算してみよう・・・お!
「VDOT = 50」と出たぞ。これが僕の「現状VDOT」だね!

ウエハラ : はい!そんな感じです! 


【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

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2 自分の「目標タイム」に対応する「目標VDOT」を確認する では、次に自分の「目標タイム」を入力してみましょう。 そこから計算されたVDOTが、あなたの「目標VDOT」です!

マラソン初心者 :
僕の目標はサブ3!
つまり、「VDOT = 54」これが僕の「目標VDOT」だね。 


ということで、この場合は

「現状VDOT = 50」→「目標VDOT = 54」 


フルマラソンのタイムで表すと

現状 3時間10分 → 目標 2時間58分 というように、VDOTを引き上げることがトレーニングのポイントになります。


3 設定した「目標VDOT」における“5種類のトレーニングペース”を確認する 次は、「目標VDOT」における“5種類のトレーニングペース”を確認しましょう。 

サブ3を目指す人であれば「VDOT = 54」なので以下の通りです。


■「VDOT = 54」のトレーニングペース■

1Eペース = 5分14秒~4分38秒 /km

2Mペース = 4分14秒 /km

3Tペース = 4分00秒 /km

4Iペース = 4分25秒 /km

5Rペース = 1分22秒 /400m

日々の練習でこのペースで走れるようになったら、「目標VDOT = 54」に相当する力が付いてき たと思っていいでしょう。それぞれのペースについての解説は後ほど。

4 設定した「目標VDOT」における“5種類のトレーニングペース”を実際の練習でこなす

ここは、実践あるのみ!ですね。トレーニング理論も大事ですが、それと同時に身体も動かしま しょう。「理論と実践の両輪」というやつです。

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」 9/10ページ

ここでのポイントは、最初から「目標VDOT」のトレーニングペースで走れる必要はないという こと。「目標VDOT」はあくまで目標です。徐々に段階を踏みながら、最終的に目標ラインに到 達すれば良いのです。

まず最初は「現状VDOT」のレベルでトレーニングを行う。そこから少しずつ練習強度をレベル アップさせていきましょう。マラソントレーニングは長い目で見てコツコツと。

5「目標VDOT」のトレーニングペースで練習がこなせるようになったら、「目標タイム」達成の 可能性は高い!

マラソン初心者 : よーし。目標を立ててから3ヶ月。これまで練習を頑張ってきたおかげで、 「VDOT = 54」のレベルでトレーニングを積めるようになってきたぞ」

ウエハラ :
おお。流石、頑張ってますね~
「VDOT = 54」のレベルで練習をこなせているなら、サブ3達成の可能 性はかなり高いですよ!

 普段の練習から目指すべきラインが決まっていると、モチベーションも保ちやすいですよね。

逆に、「どれくらいのペースで走ればいいのか分からずにトレーニングしている状態」っていうの は割と不安だと思います。「本当にこのペースで走っているだけでサブ3出来るのかな・・・?」 と不安になって練習でのランニングペースを無理に上げて、その結果怪我をしてしまったり。

「このくらいのペースで走っておけばサブ3出来るだろう。こんなもんでいいや」と思って走って いたらそれではサブ3の練習レベルには達していなかったり。

もちろん「ダニエルズ理論」も完璧なものでは決してありません。しかし、あなたがマラソント レーニングに取り組む際の“道しるべ”の一つになってくれます。

“自分が目標に向かってステップアップできている”というポジティブな感覚を持つ為にも 『VDOT』を意識しておくことはとても重要です。

まとめ 『VDOT』

1『VDOT』= “走力”

【BRC】マラソン完全攻略「解体新書」

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2様々な距離のレースでどれくらいで走れるかが推測できる。

4自分の「現状VDOT」と「目標VDOT」を明確にしよう。

■参考書籍■ 


『ダニエルズのランニング・フォーミュラ』 / ジャック・ダニエルズ 著

「ダニエルズ理論」が絶対的に正しいという訳ではありませんが、40年以上もの長い間長距離ラ ンナーの間で愛読されている本であり、現在巷に出回っているマラソン理論書のほとんどはこの 「ダニエルズ理論」に基づいていると言われています。

まさに“長距離ランナーの教科書”ですね。僕も大変参考にしていて何度も読み返しています。ラン ナーであれば一度は読んでおいた方が良い本です。

ABOUT ME
上原 一真
上原 一真
ランニングコーチ / ぼっちランナーズクラブ【BRC】代表
株式会社SmilesMiles 代表取締役 1992年生まれ、鹿児島県出身。 2005年、中学時代より走り始めランニング歴は17年以上。 1500m~5000mなどのトラック競技から100kmを超えるウルトラマラソン, トレイルランニング, 駅伝など幅広く嗜む。フルマラソンの自己ベストは、2時間34分16秒 (2021年)。 2015年から市民ランナー向けにランニングの指導を始め、サブ4~サブ2時間40分まで様々なレベルの市民ランナーの自己ベスト達成をサポートしてきた。 現在は、オンラインランニングクラブ【ぼっちランナーズ / BRC】を主宰。 「ひとりで頑張るランナーに、もっと強くなるきっかけを与え、自己重要感が高まるランニングを楽しんでもらう」をテーマとして指導に力を入れている。
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